美学生インタビューInterview
リボン
慶應義塾大学の牧村一穂ちゃんが大学生活最後に美学生図鑑へ再登場!
看護学生として勉強に励む傍ら、アイドルコピーダンスサークル「さよならモラトリアム」でも精力的に活動。2018年にはミス慶應SFCコンテストにも出場しました。
今回のインタビューでは医療に対する熱い想いも……。3年前の写真の再現と合わせてご覧ください!
睡眠時間は2、3時間。頑張れたのは「さよモラが好きだから。」
大学生活を振り返って一番思い出に残っていることは何ですか?
私が所属していた「さよならモラトリアム(通称:さよモラ)」というアイドルコピーダンスサークルでの活動です。
ハロウィン特集のインタビューでもお話したのですが、3年生の夏にUNIDOLというアイドルコピーサークルの全国大会で準優勝したことがさよモラの活動の中で特に印象に残っています。
その前に出場した別の大会では予選落ちという成績だったので喜びもひとしおでした。
素晴らしいですね!どんなパフォーマンスで準優勝を勝ち取ったんですか?
UNIDOLは審査員による採点と観客投票の合計で順位が決定するんです。他の大会と違って、お客さんに投票してもらう大会なので、自分たちがやりたいことだけでなく「お客さんがさよモラに何を求めているか」「お客さんはどんなパフォーマンスが見たいのか」を想像して戦術的に考える必要があったんです。
UNIDOLで準優勝を勝ち取ることができたポイントは何だったと思いますか?
観客の目を惹く演出で印象深いパフォーマンスができたことだと思います。
私立恵比寿中学の『なないろ』という曲を披露をしたんですけど、歌詞中の「なないろ〜」の部分に合わせてそれまで赤と青だった衣装を一気に全員「七色」に替えるという演出をしました。そこで歓声が上がってとても盛り上がりましたね。
ただの衣装替えではなく、“演出としての衣装替え”でないと意味がないんだなと学びました。
すごい!練習や衣装作りなどが忙しくて大変に思うことはなかったんですか?
苦労といえばスケジュール管理ですね。サークルの忙しさに加え、私は看護医療学部に通っていて頻繁に実習があるので、勉強も忙しくて死にそうになることもありました。
またミスコンにも出場していたのでその審査のライブ配信とUNIDOLの練習が重なったこともありました。その時は1日に9回配信することもあって、配信と配信の間の2、3時間をさよモラの練習に当てていたのでほとんど寝ない生活をしていました。
睡眠時間は電車に乗っている時だけだったので、体力的にすごくキツかったです。それでもさよモラが好きだから、さよモラのために勝ちたいから多忙な生活を乗り越えることができました。
実は私、さよモラに入りたくて慶應に入学したんです。もともと慶應を受けるつもりはなかったんですけど、高校3年生の時に1期生の先輩の動画を一目見た時から「私もここで踊りたい!」と思ってそこから猛勉強しました。
1期生の先輩たちが実力者揃いでパフォーマンス力がすごく高かったんですけど、私たちの代で「さよモラ終わったな」って思われたくなくて、私たちは私たちなりに“さよモラらしさ”みたいなものを作り上げたかったんです。
だからチームのために何でもやりました!例えば本番前なのにやることが複数ある子がいたら「何かやっておくよ!」と声をかけたり、チームの方向性がわからなくなった時に一人ひとりから目指したい方向性を聞くこともしました。
メンバーからは「いつもピンチを救ってくれるよね!」と言ってもらえたし、自分自身でもチームの助け舟のような存在になれたんじゃないかなって思います。
先ほどのお話にもありましたが、さよモラの活動に励む一方で2018年にはミス慶應コンテストにも出場していましたよね。出場した理由は何ですか?
「看護学生について広めたい」「医療について広めたい」と思ったからです。
看護学生は実際に治療に当たらない立場なのでなかなか注目されにくいんですけど、医療の未来を担っているのは私たち学生なので、もっと理解を深めてもらいたいという思いが強かったです。
多くの人に知ってもらうことで、例えば地域医療の手助けとか、次の活動への糸口になればいいな、と思ってSNSでニュースのシェアなどをするようにしていました。
ミスコンに出場することで周りからの反響はありましたか?
ミスコンへの出場が、SFC(湘南藤沢キャンパス)の人に看護医療学部にはこんな人がいるんだ、と知ってもらうきっかけになりました。
そのおかげで卒業間近のSFC生が学生生活での学びを発表するSFC Final Presentationというイベントの司会に選んでもらえたり、友人に声をかけてもらって医療の研究に携わることができました。
あと、受験生から連絡をもらえるようにもなりました。
「慶應の看護学部です!」って発信している人ってなかなかいなくて、私も受験生の時は誰に相談していいか分からず困った経験があるんです。だから、私がミスコンの活動やSNSを通じて慶應の看護学部であることを発信することによって、受験生の相談相手になっていました。
学生生活に関する質問も来ましたし、私が入学に利用したAO入試についても相談に乗りました。看護医療学部のAO入試は合格者が毎年5〜10人くらいとすごく少ないのでAO入試を受ける受験生は、それこそ相談相手がいなくて不安だと思うんです。
受験生のために私が論文を添削したこともあります。その子は会ったこともない海外に住んでいる高校生だったんですけど、添削をしてほしいと連絡をくれたので引き受けました。
さらに、現役の看護師の方から感謝の声をいただいたこともあります。以前、私のSNSに匿名で「看護師ってエロいんだろ?」というセクハラっぽいコメントが来て、それがあまりにも不快だったので「そんなことはない。そういうイメージを抱いている人がいるから看護師のセクハラが減らない。」という主旨のことを書いたら、看護師の方から「ミスコンに出てる子が発言してくれて嬉しかった。」というメッセージをたくさんもらいました。
大学や学部、名前などの身元を公開している学生が看護師へのセクハラについてはっきりと発言することって今までほとんどなかったと思うし、現役の看護師は自分から発信しづらいと思うので看護学生ならではの貢献ができて嬉しかったですね。
とても行動力がありますね!行動する際に勇気が出ないことはないんですか?
ミスコンへの出場も次の年だったらチャンスを逃していたかもしれない、UNIDOLへの挑戦もさよモラに入らなかったら味わえない青春かもしれない、やりたいと思ったことは今やるしかないでしょ!と考えています。
アルバイトや睡眠の時間を削って取り組んだのもそのためです。中途半端にやったら「あの時もっと頑張れたのに。」って後悔すると思うんです。“一生懸命頑張った上での負け”は仕方ないけど“頑張る余地を残した負け”は本当に嫌で。
だから、頑張りたい!と決めたことは全部120%で取り組んで、「今の選択がきっと最良の選択なんだ」って思うようにしています。
「なぜ必要か?」看護に根拠を求める理由
看護医療学部に進学して本格的に医療について学んで、それまでのイメージとのギャップはありましたか?
私はまだ模擬的な実習の段階までしか分からないんですけど、看護師の仕事を学んだり看護師の方の話を聞いて感じたのは「現場に入らない人から見る看護」と「実際に現場の中にいる人から見る看護」は全然違うな、ということですね。
私は、看護とは「患者さんのお世話をして役に立つこと」というイメージで看護医療学部に入学したのですが、実際に勉強してみるともっと複雑で難しい仕事だと実感しました。例えば、患者さん一人を診るのに「この患者さんはどういう持病があって今、熱が何度あるのか」を把握し、身体全体の情報を分析して、次にどういう症状が出る恐れがあるかを常に予測しなければならないんです。
そうすることで初めて患者さんに看護を提供できるようになります。だから単に患者さんのお世話をしたり怪我の手当てをするという世間のイメージよりもずっと看護師は学び、考え続けなければならない仕事なんです。
看護学生は実習中、看護師の方に「根拠は?」と何度も聞かれます。例えば、これから患者さんの頭を洗いに行くというときに「なぜ今、頭を洗う必要があるのか?」を考えて「この患者さんは今、頭を洗わないと菌に感染してしまう恐れがあるから」という根拠を導き出します。
この看護師さんの問いかけが怖いっていう投稿を看護学生向けのYouTubeやTikTokでよく見かけます(笑)でも、間違ったことをやってしまわないために根拠を考える必要があるのでこの問いかけは本当に重要だと思います。
やらなきゃいけないということは分かるけど根拠を問われると答えられないこともありますよね?
本当にそうなんです!!1年生の時の実習を振り返ったらたまったもんじゃないですよ(笑)「根拠とか難しいし分からないしなんで聞くの〜?」って思ってました。
でも、学年が上がるにつれて根拠を求める理由がだんだん分かってきました。目の前にいる患者さんが元気になるために、根拠を導き出して予測していかないといけない。そのためにはたくさん勉強しないといけない、って思うようになったしし、“看護師とはどういう仕事か”をすごく考えるようになりました。
コロナ禍で人工呼吸器が必要とされて、「看護師なら誰でも人工呼吸器使えるんでしょ?」とか「看護師がいるから安心だよね。」みたいな投稿をSNSで見かけたんですけど、実際はそんな簡単なことじゃなくて。人工呼吸器の扱い方は学校では習わないんです。
そのため、看護師は人工呼吸器の導入が決まってから扱い方をたくさん勉強しています。だから単に現場に入る人数を増やしたからといって状況が一変するわけではないんです。看護師や看護学生が常に勉強しているから最新技術の導入だったり、新しいことができているという認識を広めていきたいですね。
“情報”ではなく“人”にフォーカスしたい
これから先、医療と関わっていく上での目標はありますか?
卒業後は看護師になるのではなく、メディアで医療について発信していきたいと考えています。皆さんに医療について少しでもポジティブなイメージを持ってもらったり、難しい医療を分かりやすく伝えることで健康へのリテラシーが向上したらいいな、と思っています。
あとは、何度も言っているんですけど看護学生についてもっと理解を深めてもらいたいですね。看護学生の存在をメディアで広めて、今すぐにじゃなくてもいつかその手助けをできる存在になりたいです。
とにかく医療に携わる“人”を知ってほしいんです。医療の“状況”ってメディアとかで取り上げられることが多いんですけど“人”がフォーカスされることってなかなかないと思うんです。だから、医療従事者や医療系の学生一人ひとりがどんなことを思っているのかを知ってもらうための活動ができればと思います。
医療に携わる“人”を知ってほしいって、新しい視点だなと感じました。入学当初からそのように考えていたんですか?
「医療を広めたい」という思いはありました。当初は“医療情報”を広めたいと考えていて、“人”ではなかったんです。でも、勉強したり色々な看護学生と関わっていくうちに人があまりフォーカスされていないんじゃないかなっていうことに気づき、問題意識を持ち始めました。
今は医師や看護師の話を聞く番組が増えたんですけど、コロナ流行当初は“状況”に関する報道ばかりだったんです。何か起きた時に“人”を最初に伝えることって難しいな、と感じて、どうにかして医療現場の中のそれを伝えることはできないか考えるようになりました。
それでは最後にこの記事を読んでいる後輩たちにメッセージをお願いします!
周りの友達と助け合いながら、何事にも挑戦してほしいです!
慶應義塾大学看護医療学部は本当に素晴らしい学部なので、あなたのやりたいことを周りは必ず理解してくれるし、サポートしてくれます。1学年約100人しかいないのでみんな仲がいいんです。
コロナ禍でも一部の学生がZoomでの勉強会を主催してくれて、離れていてもみんなで高め合い一緒に勉強してる気持ちになれました。慶應に入って一番良かったことは、助け合い、高め合える友達に出会えたことです!!
それと、とにかくやりたいことはなんでもやってほしいですね。何かを理由にやりたいことをやらなかったら絶対後悔してしまうと思うんです。
私は学生の間でしか経験できないUNIDOLやミスコンに挑戦したからこそ、その後の活動につながったり、人助けをすることができました。だから今やりたいことは今、挑戦してほしいです!
あと、私は全世界の看護学生の力になりたいので、慶應生に限らずどなたでも気軽にSNSで連絡してください!お待ちしています!