美学生インタビューInterview
「一番」を求めて。ダブルダッチとの出逢い
ダブルダッチサークルに入ったきっかけを教えてください。
1回生の7月頃、サークル(Fusion of Gambit)のインスタグラムを見つけたのがきっかけです。昔、近所の小学校の合同イベントで立命館大学のダブルダッチサークルのパフォーマンスを見たことがあって、それ以来ずっと興味を持っていました。
DMで連絡をとって初めてサークルの体験に行った日がちょうどその年のダブルダッチの大会の申込日の前日で、「今日サークルに入ってくれたらギリギリ今年の大会に出られるよ。」って言われてその日のうちに入会を決めました。
ダブルダッチは初心者だったってことですよね?躊躇う気持ちはありませんでしたか?
サークルの中に知ってる人が一人もいなかったので少し不安はありました。
でもそれ以上に私は、自分が“一番になった経験”を持っていないことがコンプレックスだったんです。プロを目指して何かを頑張っている人もいる中で、私は二番手ばかり。今までの経験に本気でのめり込めてなかったのかなって思ってました。
そんな時、今のチームメイトの「自分たちは本気で世界一を目指してる。」という言葉に惹かれて、ここで一番を目指そうと思ったんです。
覚悟を感じます……!サークルに入った後はどれくらいの頻度で練習していたんですか?
チーム5人での練習がほぼ毎日、週7日ですね。1回生の冬までは週5日だったんですけど、その後の年明けから昨年12月の世界大会まで、ほぼオフはありませんでした。
練習後、深夜2時〜8時にパン屋さんの仕込みのアルバイトをして、そのまま大学に行く生活を送ってましたね。
ハードですね!チームはどうやって決まるんですか?
サークルに入った時点で3~6人のチームに分けられて、それ以降はずっとそのチームで活動していきます。どんな練習にするかも、コーチをつけるかどうかも、全部チームで決めるんです。
私たちのチームは大会で勝つことだけを考えて、勝つために必要なことを逆算して練習してました。中でも特に、縄を回す練習に力を入れていました。「縄が下手なのはチームメイトのソロを潰しているのと同じ」という認識を持ってましたね。それから、ダブルダッチはパフォーマンス競技なので縄を跳ぶだけではなくて“ダンス”の要素も重要で、その練習にも励んでいました。
「こんなに下手な人見たことない。」泣いても練習を続行した理由
数えきれないほど練習を重ねていた中で、特にしんどかったエピソードはありますか?
1回生の10月に地元でダンスレッスンを開いているプロの先生をメンバーに紹介してもらって、体験レッスンを受けに行った時です。私のパフォーマンスに対して、「面白くなさそうだから、レッスンに来ないでほしいなぁ。」って先生に言われたんですよ。
サークルに入ってからそれまでの間も他のダンスレッスンに通ってたんですけど、全然自分の成長が感じられないしこれじゃ大会で勝てないよねって自分でもわかってて。それで、その先生のレッスンを受けに行ったんですけど……。
厳しいですね。
そうですね。その後、大会でのパフォーマンスを先生に見てもらう機会があって、「良くなってる。またレッスンに来たかったら、来たらいいよ。」と言ってもらえたのでレッスンに通い始めたんですけど、最初の1か月はボコボコにされました。
「初心者のいるチームが大会で勝てるわけがない。」とも言われたし、「人の10倍頑張ってやっとスタート地点に立てる人間。」とも言われました。LINEで厳しい言葉を長文でもらったり………。
でも、それはただ厳しくしてるんじゃなくて、私たちが勝ちたいのをわかってるからなんですよね。先生も忙しい中で、2、3日に1回は私たちのためにレッスンを開いてくれるし、レッスンのない日もLINEで練習動画を送ったらコメントしてくれて、大会の直前は毎日練習付き合ってくださいました。
まさに師匠ですね。
人生の師匠みたいな存在で、リスペクトしてます。初めて会った時は怖いしレッスンも嫌いだったけど、今では「本当に頑張ってるわ。」って認めてくれて。先生との出逢いは自分の人生の大きな部分を占めてると思います。精神的に成長させてくれて、今も心の支えになっている人です。
辛い練習も多かった中でどうやってモチベーション維持していたんですか?
意地です、「勝つしかない!」っていう。
何回もチーム崩壊の危機に遭ったし、精神的にも半うつ状態になりました。練習中に泣き出しちゃうこともあったんですけど、そんなことメンバー同士お互い気にしてられないから、無視して練習続行。ただ水が出てるだけ(笑)
心配してメンバーが練習を止めてくれる場合もあると思うんですけど、私たちのチームはそれが全くなかったです。悔しいときにもっと頑張りたいって思うタイプの私からすると、逆にその雰囲気が心地よかった。
同じサークルの先輩後輩は、そんなチームの雰囲気に若干引いてました(笑)でも、実際は全部勝つためだったんですよね。
どんどんストイックなエピソードが出てきますね。
「今まで出会った人でこんなに下手な人見たことない。」って言われてたこともありますよ。もうここまでいくと、半ば漫画の主人公気分ですよね(笑)
もともと自分が不器用なのはわかってましたけど、それでもやっぱり落ち込むわけで。そんな時は、「大丈夫、大丈夫」って自分で自分を励ます。途中で投げ出す方が後々コンプレックスになるし、辞めたら一生後悔するとわかってたから。
「できる、できる」って自分に言い聞かせるときと、「もう無理かもしれない」と思うときとを繰り返していて、早くそんな暗闇を抜け出したいと思いながら必死に練習してました。
いよいよ迎えた夢の舞台!優勝とともに得たものとは
世界大会の出場チームはどうやって決まるんですか?
私たちが出場したのは『National Double Dutch League DOUBLE DUTCH HOLIDAY CLASSIC(ナショナルダブルダッチリーグ ダブルダッチホリデークラシック)』という世界大会なんですが、これは『Double Dutch Delight Japan』という国内大会の上位3チームに入ると出場できるんです。
Double Dutch Delightは高校野球でいう甲子園みたいな位置付けの大会で、私たちはここで1位を取ることができて世界大会に出場しました。
国内大会や世界大会の舞台は緊張しましたか?
あまり緊張しなかったです。新入生歓迎会でパフォーマンスをした時の方が緊張しましたね(笑)
新入生歓迎会は普通の体育館でおこなうので観客とステージとの境界がなくて、すぐ横に人がいるプレッシャーがありました。反対に、大会の舞台は観客とステージの境界が明確なのでステージに立てば自然と自分の世界に入れるんです。舞台に立っている間は「絶対ノーミス」ってずっと考えながらパフォーマンスしてました。
国内大会と世界大会で何か違いはありましたか?
世界大会はニューヨークのアポロ・シアターでやったんですけど、ニューヨークの方々はとにかく盛り上がりが大きかったです。日本での大会はピリッとした空気が漂っていてみんなが緊張しながら見守っている感じなんですが、ニューヨークでは少し技を決めただけですぐ歓声があがるし、拍手もたくさんしてくれるし、スター気分でしたね。
あと、海外と日本では評価基準が異なっていて、日本では精密さと細かい作り込みが評価される一方で、海外ではダイナミックさが重要になってきます。自分のテンションやパッションをどれだけ伝えるかが大事なので、日本の大会では丁寧さを心がけ、世界大会では本番前に自分のテンションを整えていました。
世界大会で優勝した時、どんな気持ちでしたか?
「一番になった経験がない」という自分のコンプレックスも解消されたし、友人や母も喜んでくれてたので、挑戦して良かったなって心から思いました。
それと、国内大会で関西のチームが勝つのが7年ぶり、2回生での世界大会優勝は初めてだったんですよね。この大会では優勝したチームの所属する地域で次年度の大会がおこなわれるんですけど、以前から「大会の開催地を関西に戻そう」みたいな流れがあったので、OB・OGの方々の期待に応えられたのも嬉しかったです。
ダブルダッチの経験を通じて、草野さん自身の中で変化したことはありますか?
自分に厳しくなりました。勝つために自己分析したり、目標を達成するための練習方法を考えたり、3日ごとに「絶対にこれをやる」って計画したり。もう無理って挫けそうになったときでも、そのまま諦めるんじゃなくてもっと頑張ろうと思える根性がつきました。
それと、パフォーマンスをしている側の気持ちがわかるようになりました。今までは、誰かのパフォーマンスを見ても深くまでは感じ取れなくて。でも今は、この人はここにだわってるんだなぁというのがわかるようになりました。仕掛ける側の視点が身についたのかもしれません。
のめり込んだからこそ得られた変化ですね!これからもダブルダッチは続けていくんですか?
本格的にやることはもうないと思います。今もチームメイトと一緒に練習はしてますけど、大会に出るかって言われたら出ないですかね。イベントなどの機会があればまたパフォーマンスしたいなと思います!
美学生プロフィールProfile
担当カメラマン・インタビュアーCameraman & Interviewer
井上 翔也
僕も昔から美学生図鑑の読者でした!美学生図鑑は1日1度見に来るだけで癒される、そんな場所です。美学生たちの煌めいた一瞬を皆様にお届けすることが出来るよう頑張ります!
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