美学生インタビューInterview
養成所で演技を勉強しています
インスタグラムを拝見しました。目を惹く素敵な写真ばかりですね!
もともとは高校からの友人に撮ってもらった写真を載せていました。僕は俳優、友人はビデオグラファーを目指していて、お互いに練習とポートフォリオ作りのために作品撮りなどをしていたんです。最近は他のフォトグラファーに撮ってもらう機会もあります。
そもそも俳優を目指すきっかけは何だったんでしょう?
名作と語り継がれるような作品の一部になりたいという思いが昔からありました。
大学1年の時に芸能事務所にスカウトされて、結局、面接で落ちてしまって所属はできなかったんですけれど、それを機に表舞台に出ることに興味を持ち始めました。その後、とある養成所で初めて演技に触れた時に、その繊細さと純粋な美しさに強く惹かれたのがきっかけです。
もともとミュージカルを観たり歌ったりすることが好きだったのもありますね。高校の文化祭の劇でキャストをやった時も、みんなで一体となって舞台を作る感覚が忘れられませんでした。
俳優を目指して、今はどんなことに取り組んでいますか?
養成所に通ってレッスンを受けながら、色々な芸能事務所のオーディションを受けているところです。養成所では「メソッド演技法」と呼ばれるハリウッドで主流の演技法を学んでいます。直近ではショートフィルムなどでも経験を積み重ねていますね。
「メソッド演技法」とはどういうものなのでしょうか?
自分の過去の経験などから演じる役の感情を追体験することで、よりリアルで自然な演技表現を目指すものです。例えば、戦争で親を亡くした人を演じようとしても、そんなの経験したことないしわからないじゃないですか?そういうときに自分の過去の経験、例えば愛犬を亡くした経験があれば、そこから愛するものを亡くすことに対して想像力を補うことができるんです。
なるほど、実体験から役の感情を湧き上がらせていくんですね。
演技の勉強を始めてから、日常生活の中で自分の感情に向き合うことが増えました。演技をすることって、自分の心の中を冒険することだと最近思うんです。アーティストが何かからインスピレーションを得て音楽や絵などを生み出すのと同じように、役者も心と体をフルに使って表現をするんだなと感じます。
養成所では具体的にどのようなレッスンをおこなっていますか?
基礎的なエクササイズからシーンワークまで色々あるんですが、例えば「レペティション」と呼ばれるエクササイズがあります。
レッスン生同士で2人1組になって互いに向き合って、相手から受けた印象を口に出します。「楽しそう」とか「眠そう」とか。そしたら、言われた側はその言葉をオウム返しする。例えば、相手が「あなた、髪もっさりしてるね。」と言ったら「うん、僕、髪もっさりしてる。」みたいな感じで。そんなやり取りを繰り返す中で、また相手に対して気づきがあれば口に出していく……そんなエクササイズです。ちょっとわかりづらいですかね?
なんとなくわかりました(笑)これをすると何が鍛えられるんでしょう?
相手の表情や仕草、声のトーンなどからインプレッションを受け取る感度が高くなるんです。
演技って言うなればすごく不自然なことをしているわけじゃないですか。その中で役に入っていくには、相手から得たものを吸収して出すことが大事なんです。いかに素直に目の前のことを受け取って跳ね返せるか。キャッチボールみたいなものですよね。自分一人で演じるわけじゃなくて、相手とのインタラクションの中で作り上げていく。それが僕はすごく楽しいんです。
求められる場所で“自分”であり続けたい
俳優を目指していく上で今の自分に足りないもの、課題は何だと思いますか?
知識と経験が圧倒的に足りていないと思っています。どんなアートも先人が築き上げたものがあるからこそ今の美しい形があるし、良い演技にはそこから得られるインスピレーションが不可欠だと考えています。俳優としての自分の唯一無二な部分もこれから勉強しつつ模索するべき部分だと意識しています。
それと、俳優を目指し始めてから自分のアイデンティティについて考えるようになって、「自分であり続けたい」「思慮深い人間でありたい」という気持ちが強くなりました。叶うならば、“自分”の存在が求められる場所で“自分”であり続けたい。そういう生き方に憧れるんです。ものすごく自意識が高いのかもしれない(笑)その気持ちとどう向き合っていくかが今後の課題ですね。
現在3年生。同学年の人たちは就活に取り組んでいる頃かと思いますが、俳優という道を目指すにあたって不安はありませんか?
いっぱいあります。芸能一本で食べていける人は限られていて、そこには運の要素が大きく関わっていると言われています。努力が成功の保証にならない世界でありながら、努力なしに成功する人はいない。なかなか報われない人生になると思います。
それでもシーンを演じ作り上げる瞬間瞬間に喜びを感じるし、自分の成長を噛み締めながら足跡を残せればと思っています。
将来はどんな俳優になりたいですか?
作品の中で生き続けてるような人っているじゃないですか?そういうのが理想です。一つひとつの所作、一瞬の視線で見ている人を惹きつけられるような俳優さんに憧れます。
最終的な目標は、世界的な俳優になることです。実は僕、祖母がアメリカ国籍で、小さい頃から英語が身近にある環境で暮らしてきたんですよ。最近はNetflixとかで日本の俳優が海外の作品で活躍する機会も増えてきているし、英語力を武器に俳優としての幅を広げていきたいです。