美学生インタビューInterview
一つの課題に2、3か月!最後の1週間は寝る間も惜しんで……
大学4年間は建築デザインについて学んできたそうですね。建築に興味を持った理由を教えてください。
父が建築系の仕事をやっていたのがきっかけで自分も学びたいと思ったんです。衣食住の中でも「住」が一番高い買い物だし、生活の基盤じゃないですか。将来は建築家になっていつか自分が設計した家に住みたいなぁなんて憧れていました。
それで建築デザインコースがある、武庫川女子大学の生活環境学部に進学したんですね。どんな授業があるんでしょうか?
2回生からコースに分かれて本格的に建築について学び始めました。設計の授業では現実に存在する敷地を与えられて、そこに建造物を建ててくださいといった課題が出されます。実際に敷地を見に行って、日の当たり方や人通りの多さ、周りに何が建っているのかなど、自分たちの目で確かめながら設計を進めていくんですよ。
架空の敷地ではなく、実在する敷地をベースにするんですね!
そうなんです。例えばバリアフリーを考えて設計する場合は実際に車椅子に乗って必要な幅を計測したりもします。
あ、でも、実在する敷地といっても本当に建物を立てるわけじゃなくて、あくまで設計までなんですけどね。
具体的にどのような流れで設計を進めていくんですか?
まず、なんとなくの配置のラフ画を描いて、そのあと積み木のような物で簡単な模型を作って、そのあと「こんな物を作りたいです」というのを先生に提出してフィードバックを受けながら改善していきます。「エスキースチェック」と言うんですがこれを2、3回繰り返して、OKをもらえたら図面を描いて本格的な模型づくりに取り掛かるといった感じです。一つの課題に大体2、3か月くらいかかりますね。
2、3か月……!どの工程が一番大変なんでしょう?
エスキースチェックです。実は、課題の発表日の1週間前までエスキースチェックがあるんですよ。つまり、先生からGoサインが出たあと、たった1週間で模型をゼロの状態から完成まで持っていかなきゃいけないんですよね。
だから、最後の1週間はアルバイトも入れることができません(笑)学校が開いてる時間ギリギリまで残って、寝る間も惜しんで製作を進めます。
模型作りをそんなに短期間でやるとは……
スチレンボードっていう発泡スチロールの板を切って、接着して、組み立てます。「外から見えるものは作らないといけない」という決まりがあるので、窓を多くすると中も作らないといけなくて大変です……。発表の日の朝ギリギリまで作業してる子もいました。
ちなみに、模型の材料費は自腹です(笑)建物だけじゃなく植物や歩いてる人、車の模型とかも並べないといけなくて、それは売っている物を使います。一つの模型に大体7000円くらいかかりますかね。
これまでで一番印象に残っている課題はありますか?
3回生の前期にアパートを設計する課題があって、それが一番大変で記憶に残っています。
こだわったポイントを教えてください。
隣に神社のある敷地だったので、建物を4つの空間に分けて通り道を作り、人が集まる空間を作ることを意識しました。また、緑や木を取り入れて新しい建物とも馴染むようにし、木目の格子をつけることで周りからの視線を遮断しつつ光を取り入れられるようなデザインに落とし込みました。
挫折のその先に
大学卒業後は設計に関わる仕事に就くんですか?
いや、それが途中で挫折してしまったんですよ。それこそさっき話した課題に取り組んでた頃に、自分はもう建築向いてないなって。
どうしてそう感じたんですか?
才能のある子が周りに多すぎて、頑張っても敵わないなって思ったんです。他の子の発表を見てると、自分では思いつきもしないアイデアが出てくるし、上手い子ってその建物に住む人と人とのつながりを設計に落とし込むのが得意なんですよね。私はそういうセンスがなかったし、周りと比べたり課題に追われるうちに最初は楽しいと思って学んでいた建築が嫌いになってきてしまって……。
もともとは設計の仕事に就きたくて住宅メーカーに就職したいと考えていたんですけど、自分のやりたいことを考え直して、最終的に建材メーカーに就職することになりました。
建材メーカーですか!
窓やドアなどの建具(たてぐ)を設計して、建築会社などに提供します。コロナ禍の今はパーテーション(間仕切り)の商品開発をしたりもするみたいです。
建材については大学では勉強しないので、みんな就職したあとに一から学びます。これまで学んできたことを生かしつつも、実力差なく新しいスタートを切れるのが今は楽しみです!
卒業まであとわずかとなりました。残りの大学生活でやりたいことはありますか?
1〜3回生の間は課題が山のようにあって忙しい日々が続いていたので、沖縄へ卒業旅行に行ってのんびり過ごしたいですね。
あと、卒業制作も!大規模な設計をするのはもうこれが最後だと思うので悔いのないように頑張りたいです。