美学生インタビューInterview
『約束が守れなかった時、その約束自体に問題はなかったのかなって考えますね。』
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1.始めに学校やされている活動の紹介をお願いします。
京都造形芸術大学映画学科俳優コース4回生の結香です。北海道出身です。音楽を中心に、俳優、モデル、写真など様々な表現活動を行なっています。いまは卒業制作で長編小説に挑戦中です。今年2月からA-Light(エーライツ)という芸能事務所にも所属しています。
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2.まずは音楽活動のことを教えてください。
4歳からエレクトーンをやっていて、一番古いもので5歳の時に作った楽譜が残っています。中学の頃は吹奏楽部でパーカッションをしたり友人とバンドを組んだりしていました。高校でも吹奏楽部に入り指揮者をしていましたね。大学で京都に来てからも色々なバンドでボーカルをやっていて、去年の西院ミュージックフェスティバルにはソロで出演しました。作詞や作曲もしていて、ゼミで映画の音楽監督になって作った曲が大学の映画祭の音楽賞を取り、行定勲監督に褒めて頂くことがあって、ものすごく嬉しかったです。今年の9月には京都の一乗寺というところで9月28日にツーマンライブも予定しています。
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3.歌うだけじゃなくご自分で曲も作るんですね。どんな風に作詞・作曲するんですか?
普通は詩先や曲先といって、先に詩を書いてそれに合う曲をつけたり、ギターとかでコードを弾いて後から詩を書いたりすると思うんですけど、私の場合は詩と曲が頭の中で同時にできて、完成曲みたいなのを外に出すんです。楽器を使わず作曲することが多くて、頭の中で奏でたものを楽譜に起こします。個人的にはスピッツが好きで影響を受けていると思うんですが、アコースティックなものからロック、インスト、オーケストラなど、どんな曲でも作りますね。
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4.どんな時に音楽を作るのですか?また、楽曲制作に関して何か意識していることはありますか?
私の場合、感情がある一定のゲージを越えた時に自然と音楽が出てくるんです。それは私にとって呼吸をするくらい当たり前のようなことで、そうして出来てきた曲に関しては何かを意識して作るというよりも、頭の中で鳴っている音楽を取り出してあげるという感じですね。
自然に作る曲意外に、映画音楽など楽曲制作を依頼されることもあるのでそういった時のために、日々の中で周りの景色が変わった時や空の色などを忘れないようにしていますね。普段と違うことを感じたらそれを覚えとこうと思っています。カフェの水差しの中に浮いているレモンを見てすごく黄色いなと思ったことや、そのレモンの淵に水が浸食したからか少し緑色になってるんだなとか、こういう細かいことをいっぱい見ていっぱい覚えておきます。出来るだけ依頼されたイメージ通りの楽曲を作りたいので、自分の中に色んなものを貯めているんですよ。
今回写真に撮って頂いたように私は絵も描くのですが、これも覚えておく一つの方法なんです。色んなものを見たときに感じたイメージを、絵として描き残すんです。例えば夕日を見たときに暖かくて包まれているようだなと感じたとしても、絵を描くときに赤い色になるとは限らなくて、緑色だったり黄色になったりするんですよ。だからかな、私の描く絵をジャンル分けすると抽象画に近いですね。得たイメージを抽象画としてメモしておくことによって、後でその時の気持ちを思い出せるようにしています。 -
5.結香さんはたくさんの表現方法をお持ちですが、中心が音楽なのはなぜでしょうか?
小さい時からずっと曲を作ってしまっていて、それが悪いことだと思っていました。さっきも少しお話しましたが、私にとって曲を作るのは自然なことで、作るというよりも出てきてしまうものなんです。多くの人が作詞や作曲をしないで生きていけるのに、自分は食べる、寝る、と同じくらいの感覚でいつも曲を作ってしまいます。普通にしてるつもりなのに他人よりも排泄物が多という感じで、それが良くないことだと思っていて、楽譜に起こしたり、人に教えたりせずに長い間すごしてきました。
でも17歳の時に、自分の将来について真剣に考えて、芸術の道で生きていく覚悟を決めました。このままでいたくないと思ったんです。それまで自分の中から出てきてしまうものに対して、理解や共感をしてもらうことを諦めて何もせずにいたんですが、分かってもらう方法を見つけたいと強く思いました。自分の感覚を共感してもらいたいと考えたとき、音楽が一番自分自身に近くて表現しやすいと思ったんですよね。だから中心は音楽なんです。他にも色々な表現活動をしているんですが、自分の中では根は一緒でどこかに切り替えスイッチがある訳でもなく、どんな形で出てくるかの違いがあるだけだと思っています。 -
6.芸能事務所にも所属されてるんですね。今の事務所に入った経緯は?
えっと、ただの就活です(笑) 今までは音楽系の企業にしかテープを送っていなかったんですが、間口を広げようと思って今年の1月から月に20社ほどオーディションを受けました。オーディションは結香という個人を見せたほうがいいと考えながら受けていましたね。今所属している事務所に合格をもらってタレント契約をしましたが、まずこの1年はレッスン期間です。体を使って何かを表現することは全部タレントの勉強になるので、演技やボイストレーニング以外にジャズダンスなんかもやっています。遠回りでもいつか歌に繋がると思っていて、どんな活動でもやりたいですね。
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7.この先どんな人間になりたいですか?
よく言うのが「コンビニのビニール傘」みたいな人になりたいです。ビニール傘って晴れの日に売ってるの見なくないですか? 雨の日だけ売り場に出てバッてたくさんの人が買いに来るけど別に雨が降っていなければ目につかないというか……。「誰か助けて」って言う時の「誰か」、手を伸ばしやすい存在でありたいですね。いつでも助けに呼んでもらいたいですが別に必要じゃない時は全然映んなくてもいいと思います。でも仲の良い人が困っていて自分じゃない人に助けを求めたら嫉妬してしまいますね(笑) なんで私じゃないんだろうとか、私じゃ力不足だったのかなってすごく思ってしまいます。多分世界中の人から好かれたいんですね。
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8.最後に読者へ一言お願いします。
自分のモットーとして「守れない約束はしない、一回決めたことは絶対やる」というのがあるんです。何か努力をしようとしたけれど挫折してしまった人って多いと思うんですが、約束が守れなかった時、その約束自体に問題はなかったのかなって思うんです。大きな夢があってもいいんですけど、自分の発言に責任を持って欲しいな。
私の場合すごく単純なことですけど、17歳の時に「音楽で生きていきたい」って考えた日から柔軟と筋トレを絶対すると決めて、今でもずっとやっています。「今日だけ特別にやってやったぞ」じゃなくて、小さいことから慣れていって非日常を日常に変える努力をして欲しいなって思います。無理なことは続かないから、毎日していることを楽しんでいけたらいいなと思いますね。
結香さん、お話ありがとうございました! (写真=松下順子、文=小林純也・加藤真理子)