美学生インタビューInterview
『失敗の経験も後悔にするよりは、これからの為に生かしていくほうが良い』
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1.まずは東海林さんの自己紹介をお願いします。
関西大学文学部4回生の東海林美咲です。英米文学英語学というコースを専修していて、主に英文小説を研究しています。また関大内にある「授業支援ステーション」で講義が円滑に進むように学生や教授をサポートする「授業支援スチューデントアシスタント(以下SA)」という仕事もしています。あとはアカペラとテニス、2つのサークルに所属していますね。
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2.英文小説の研究ってどんなことをするんですか?
「英語で書かれた原本」と「日本語に翻訳されたもの」で表現や描写の違いを比べたり、英単語が持つ微妙なニュアンスを通して物語を深く読み取ったりしています。例えば、私はハリーポッターシリーズが好きで翻訳版と原本の両方を読みましたが、翻訳版には何気ない日常のワンシーンとかに翻訳家オリジナルの表現が使われていたりするんです。翻訳した人の感性とかもストーリーに反映されているのが面白いなと感じましたね。また日本語の「楽しい」という言葉は英語では「enjoy」や「happy」など様々な単語で表せますが、「happy」の持つ「満足な」という意味を「enjoy」が持っているわけではないんです。なので「ここでは何でこの単語を使ってるんだろう?」と考えたりします。昔は身分や階級で使う言葉が違ったりしたので「この人は貴族だ」とか「この人は身分が低い」ともわかったりするんですよ。
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3.今までに一番心に残った本は?
「IT(それ)と呼ばれた子」という本を知っていますか? カリフォルニア州至上最悪といわれた虐待を受けた方が実体験を元に書いた本なんです。その虐待の内容が酷すぎて……。でも自分が中学生の時は友達と色々あって落ち込んでた時期だったので、自分が一番不幸だと思うのは間違ってるな、もっと辛い人もたくさんいるんだなと思って元気になれました。楽しい話を読んでハッピーになるより、悲しい話で泣く方が心にくるじゃないですか。そういう話で自分の感情が刺激されるのが好きなんですよ。
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4.SAはどうして始めようと思ったんですか?
一回生の頃、友達にちょっとやってみようよって誘われて説明会に行ったのがきっかけでした。SAの仕事って、学生から提出されたレポートの整理や授業で使う資料や機材の準備、講義中に学生の出欠確認をしたりと色々あるんですが、始めは学生がやっているって知らなかったんです。実際に始めてみると少しの空き時間に色んな教授と話ができたりして、こういう専門分野の話が聞けるのは大学生の間だけだなと思いました。みなさん研究や何かを積み重ねて今の地位に就いた方々なので、学生同士とは話の重みが違いますよね。ちょっとした人生の話とかもして下さって、それが心にストンと落ちるときがあります。
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5.どんな話が印象に残っていますか?
出欠を取りに行った時、中には全く授業を聞いていない学生とかもいるんですね。それに怒る教授もいるんですけど、ある教授が講義後に教室に残っていて「大変ですね、怒ったりしないんですか?」って聞いたんです。そうしたら「僕の話は全部聞かなくてもいいから、何か一つでも心に残ったらいいんじゃない。興味ない分野でも何か一つ為になることがあったら僕はそれでいいよ」って仰ってました。確かに全ての人に同じように物事を伝えるのは感じ方や興味も違うので 難しいじゃないですか。でも何か一つでも人生に生かせたらそれはそれで良いのかなと思いました。それにちょっとしたことで怒らず、何事もポジティブに捉えられたら良いなと。むしろ失敗の経験も後悔にするよりは、これからの為に生かしていくほうが良いと考えられるようになりました。
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6.サークルを2つも掛け持ってて大変じゃないですか?
4回生なので引退しましたがアカペラが週に2回程、テニスも週3回練習があったので毎日サークルでしたね。でもその分、色んな人と知り合って色んな経験ができたと思ってます。アカペラではライブに出たり他の大学と交流したり、本当に上手くて尊敬できる先輩とも出会えました。テニスの方は合宿で先輩の運転する車で遠くへ出掛けたりとみんな仲良くて、話したことのない人が一人もいないってくらい交流が持てましたね。大学生になって初めてのことばかりだったので全部が新鮮でキラキラしていました。人間関係の面でも2つとも違いがあり、両方経験できて良かったです。
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7.これからの進路は?
色々決めきれていないんですが社会貢献度の高い企業に就職したいですね。多くの人が必要とする金融関係や医療・福祉係、今後ますます情報化社会が進むのでソフトウェアやIT関連企業など絞らないで広く見ていきたいです。一人暮らしを始めて今まで自分は周りの支えがあって生きてきたんだなっていうのを凄く感じたんです。夜、家に帰って「おかえり」って言われたり、誰かと話せることで気持ち的に違ってくるんだなと思いました。私、想像力が豊かなのでそこからどんどん自分の中で話を広げて、当たり前に色んなものが整っていて、当たり前に美味しいものが食べれるのは今まで日本という豊かな社会で生活してこれたからだなって感じました。私はそういう社会に支えられて生きてきたんだから今度は支える立場の仕事をしてみたいなと思って企業を探しています。
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8.これから先、どんな人間になりたいですか?
簡単に言ったら「完璧に近い人間」ですね。所属する場所や一緒にいる人によって自分のキャラクターや役割が違ってくることってありますよね。なので色んな人に出会ったらその分、色んな自分にも出会えると思うんですよ。「私ってこういうことが好きなんだ」とか「こういうことが楽しいんだ」ってわかるし、逆に「こういうことは嫌いなんだ」とか「ここが私の悪いところなんだ」って部分もたくさん見つかると思うんですよね。そこを理解した上で周りの人を見て良い部分だけを自分の中に取り込んでいけたら、完璧とはいかなくても理想に近い人間になれるのかなって考えてます。
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9.最後に美学生図鑑を見てくれている読者にメッセージをどうぞ。
全てが自由な時間って今しかないと思うのでやれるだけのことはやってみたらいいと思います。できるだけ後悔しないように過ごすということですかね。ちょっとでも興味が湧いたことがあったら飛び込んでみる。ただ抱え込み過ぎたら自分が辛いし、周りの人にも迷惑が掛かっちゃうので、そこは優先順位を付けて取捨選択をしていくことが大事だと思いますね。だから出来る限りの範囲で思いっきり好きなことをやったらいいと思います。
東海林さん、お話ありがとうございました! (写真=坂口亮介、文=小林純也)