美学生インタビューInterview
ちょっとした気配りのあるデザインで世の中を便利にしたい
水谷さんは芸大でデザインを学んでいるそうですね。将来の夢を教えてください。
「ユニバーサルデザイナー」を目指しています。ユニバーサルデザインというのは、年齢や国籍、障害の有無に関わらず、誰もが使いやすいデザインのことです。たとえば、点字ブロックなどもユニバーサルデザインの一例ですね。
ユニバーサルデザイナーを目指そうと思ったのは何故ですか?
ものづくりが好きだったのは小学生の頃からなんですが、その頃から「これ使いづらいな」と感じる道具に出会うことが多々あって、そこから「もっと誰にでも使いやすいものが作れたらいいのに」と思うようになったのが最初のきっかけです。
また、小学校の頃には支援学級の子たちと一緒に過ごす機会も多かったんですよね。その中で、たとえばハサミ一つとっても、持ち手の部分がプラスチックじゃなくてグリップ素材になっていれば、もっと持ちやすいし使いやすいのにと思ったことがありました。
知的障害のある人など、一人で何かをするのが難しい人でも、ちょっとした工夫があれば自分でできるようになることってたくさんあるんですよね。もちろん、周りの人が助けることも大切だとは思うんですけど、ちょっとデザインを変えるだけで「自分の力でできた!」っていう達成感を得られたら、それってすごく嬉しいことだし、本人だけじゃなくて周囲の人も幸せになれると思うんです。
そんなことを考えていた時に親から「ユニバーサルデザイン」という言葉を教えてもらって、調べてみると、世界ではかなり進んでいるのに日本ではまだまだ浸透していないことを知りました。「ユニバーサルデザインを日本でももっと広めたい」と思ったのが目指すようになった理由です。
なるほど、とても素敵なきっかけですね!
今はユニバーサルデザインの他に、お菓子のパッケージデザインにも興味があります。「インハウスデザイナー」と呼ばれる、企業の中でデザインを担当する職種なんですけど、いつかユニバーサルデザインとパッケージデザインを掛け合わせたような、そんな仕事ができたらいいなと思っています。
たとえば、ポテトチップスって食べるときにどうしても手が汚れてしまうじゃないですか。最後に指についた粉を舐めるのが楽しみな方もいれば、手が汚れるのが嫌で食べづらいと思う方もいると思います。海外では、袋の端を切ると指先に使える小さな手袋のようになるパッケージなどもあるそうなんです。そういったちょっとした気配りのあるデザインを提案できるようになりたいです。
世の中にはさまざまなデザイン分野がありますが、お菓子のパッケージに惹かれるのは何故ですか?
お菓子って、子どもから大人まで幅広い世代の人が食べる物じゃないですか。でも、子どもが思う“おしゃれ”と、大人が感じる“おしゃれ”って違うし、誰が見ても手に取りたくなるようなデザインにするのってすごく難しいと思っていて。だからこそ魅力的だし、やりがいのある仕事だと感じます。
普段からデザインを観察したりしているんですか?
スーパーに行くと、お菓子のパッケージを見てまわって、「このデザイン素敵だな」と思ったらすぐに写真を撮ったりしています。旅行先でも気になるポスターを見つけたら写真におさめて、帰宅後に「何故、自分はこれを素敵だと感じたのか」を考えます。
あと、世の中にある既存のパッケージデザインを、自分なりに「もっとこうした方がいいかも」と考えて、勝手にアレンジしてデザインしてみることもあります。完全に自己満足なんですけど、「こっちの方が良くない?」なんて考えながら楽しんでいます(笑)
将来的には、誰もが知っているようなメジャーなお菓子のパッケージをデザインするのが夢です!
鮮やかな色使いがこだわり!“抽象画”の個展を開催
これまでに自分のデザインを発表する場などはありましたか?
デザインではないんですけど、去年の夏にギャラリーを借りて、独学で描いている抽象画の個展を開催しました。iPadで描いた作品を学校のプリンターで印刷して、30点ほど展示しました。
「抽象画」ですか!
抽象画はデッサンのような写実的な表現とは違って、線や形、色などの要素を自由に組み合わせて、感情やイメージを芸術的に表現する分野です。ピカソの絵をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
実は私、小学生の頃からそういうテイストの絵を描くのが好きだったんです。でも、周りからは「落書きみたい」と言われることも多くて……。そんな時、小学校の美術の先生が、「これは抽象画って言うんだよ」「すごく上手いから大会に出してみよう!」と言ってくれたんですよね。その言葉がすごく嬉しくて、自分の絵を初めて認めてもらえたような気がして、そこからどんどん抽象画の魅力にのめり込んでいきました。
色彩がとても鮮やかですね。
私の絵は原色しか使わないのが特徴なんです。灰色を混ぜたり、色に深みを出すような描き方の方が絵としての完成度は高くなるらしいんですけど、私は暗い色があまり好きじゃなくて、あえて目がチカチカするような鮮やかな色使いをしています。原色の組み合わせからしか得られないエネルギーがあると思っていて、それが私の絵のこだわりの一つです。
来場した人の反応はどうでしたか?
「ポジティブな気持ちになれる」と言ってもらえることが多かったです。年配の方も見に来てくださったんですけど、「部屋に飾りたい」とか「リビングが明るくなりそう」って言ってくれる方もいてとても嬉しかったです。上の世代の方にはあまり受け入れてもらえないだろうと思っていたので、意外と好意的に見てもらえて自信にも繋がりました。
最終日に大号泣!部活のような団結感を味わえた福娘の活動
水谷さんは今年、今宮戎神社の福娘を務めましたよね。応募したきっかけを教えてください。
祖父母が昔からずっと「孫が福娘になるのが夢」と言っていたんです。それで、「じゃあ、おじいちゃんとおばあちゃんの夢を叶えてみようかな」と思ったのがきっかけでした。
でも、福娘って賢い大学に通っている子が多いってイメージを勝手に抱いていたので、芸大生の自分が受かる自信は正直ありませんでした。運良く選んでいただけて、本当に嬉しかったです!
福娘になって、どうでしたか?
私は今まで部活動などをしてこなかったので、福娘の活動を通して初めて「みんなで何かをやり遂げる」という団結感や達成感を味わうことができました。人生の中でトップ3に入るくらいの素敵な時間だったと言っても過言ではありません。
あまりにも大きな経験だったので、十日戎の最終日には福娘45人の中で私一人だけが大号泣してしまったんですよ。「もう終わるんなんて無理!」「まだ十日戎したい!」なんて言いながら(笑)同期の子たちにたくさん慰めてもらいました。
号泣するくらい素敵な経験だったんですね!同期との団結感は、具体的にどんな場面で感じましたか?
たとえば、テレビ局や新聞社に挨拶まわりをする日があったんですが、その移動中のバスの中でみんなで挨拶の練習をしたのも思い出に残っていますし、休憩時間にみんなで「寒いね~!」と言いながらご飯を食べたりおしゃべりをする時間もとても楽しかったです。
また、誰かの着物が少し崩れてしまったときには、「私、ここ押さえてるから!」と声を掛け合いながらみんなで一生懸命直したりしました。部活のような一体感が新鮮で、どの場面も素敵な思い出です。
それに、福娘の同期の中にはファッション雑誌のモデルをしている子やテレビに出演している子なんかもいて、「私も頑張らなきゃ」って刺激を受けました。
おじいちゃんとおばあちゃんは、十日戎に来てくれましたか?
もちろんです!人混みの中で見つけた瞬間は、嬉しすぎて思わず泣きそうになってしまって、「泣いちゃダメ、泣いちゃダメ」って必死でこらえながら笹に御札や吉兆類を飾り付けました。2人ともすごく喜んでくれて私も嬉しかったです!おばあちゃんは十日戎の3日間、毎日朝早くから着物の着付けもしてくれたので、とても感謝しています。
ただ、親戚のみんなが福笹をおじいちゃんとおばあちゃんの家に置いて帰ったので、十日戎の後は家の中が笹まみれになったらしいです(笑)
親戚一同、水谷さんが福娘になったことを喜んでくれたんですね!
本当にたくさんの方が「おめでとう」と声をかけてくれました。十日戎の2日後に成人式があったんですけど、そこでも色々な子が「福娘になったんだね!」と話しかけてくれて嬉しかったです。小学生の時に私の絵を認めてくれた美術の先生とも同窓会で再会できて、福娘になったことを伝えたらとても喜んでくれました。
美学生プロフィールProfile
担当カメラマン・インタビュアーCameraman & Interviewer

井上 翔也
僕も昔から美学生図鑑の読者でした!美学生図鑑は1日1度見に来るだけで癒される、そんな場所です。美学生たちの煌めいた一瞬を皆様にお届けすることが出来るよう頑張ります!
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