美学生インタビューInterview
YouTubeでは沈黙がカット!?代表選考会でまさかの大失態
これまでの大学生活で思い出に残っていることはありますか?
今年の1月に大阪の今宮戎神社で福娘として活動させていただいたことです。
応募のきっかけは何ですか?
今宮戎福娘は、神々と参拝者の仲を執り持ち、福をお祈りするという巫女です。私の「夕鶴羽」という名前の由来が「自分の羽で恩返しをした鶴のように、人の幸せを願う子に」ということもあり、福娘のお仕事をぜひさせてほしいと思って応募しました。
今宮戎福娘って倍率がすごく高いんですよね。
そうですね……。当時は1年生でしたしどんな審査方法かもあまりわかってないまま参加したので、何も練習できていませんでした。ですが「福娘としてご奉仕することで皆様に福をお届けしたい」と思っていただけなので、たとえ審査に落ちたとしても「私にはまだ早いということだな。」と思って、今年また応募していたと思います。
福娘のお仕事を心から大切に思っていたんですね。
実は私、もともと小心者の引っ込み思案で注目を浴びることが得意ではなかったんです。でも、福娘のお仕事は自分が脚光を浴びるというより、参拝してくださる皆様が主役のご奉仕だと思います。そこに惹かれて不安はありつつも応募を決めました。
福娘の審査過程で印象に残っていることはありますか?
代表選考会が一番印象に残っています。これは福娘が選出された後にその中から代表を決める選考会のことで、審査員の方々や司会の桂文枝さんの前でそれぞれが約15秒間の自己PRをするんです。
今宮戎神社のYouTubeで事前に拝見しました!藤村さん、すごく堂々と話していましたよね。
いや、恥ずかしい……。実はあれ、失敗したところがカットされているんです。編集の方にも気を遣わせて本当に申し訳ないです(泣)
そうなんですか!?(笑)全然そう見えませんでしたけど。上手い感じに見えました。
ですよね!あれは編集の方が細かくカットしたものを自然になるよう繋げてくださったんです(笑)
自己PRでは、先ほどお話した福娘の応募動機と所属サークルにちなんでヨットの出廷の合図を披露しました。 ですが、この合図をする時にめちゃめちゃ引っかかってしまい、沈黙を生んでしまいました(泣)あとYouTubeには載っていないのですが、自己PRの後に文枝さんが質疑応答をしてくださったんです。そこでも失態を演じました。
何があったんですか?
見るにも痛々しい感じでした、あれは……(遠い目)。文枝さんからは「慶應の野球部、優勝されていましたね!」と話しかけていただきました。それに対して上手く答えることができなかったんです。普通はそこで、例えば大阪なんだから「いやいや阪神こそ優勝されていたじゃないですか!」みたいな明るい返しをするのが本場のスタイルだと思うんですけど、私は「ありがとうございます……。」みたいな話の広がらない返ししかできなかったんですよね。
その最中も皆さんの視線が私に向いていると思うと頭の中が真っ白で、結局その場は見るに堪えない感じで終わってしまいました。選考のステージの上で緊張のあまり言葉が出なくなって固まったのは、40人いる福娘の中で私一人だったんです。その後、控え室に戻った時は恥ずかしくて泣いてしまいました。
でも、この出来事がきっかけで人の温もりに触れることができたんです。
どういうことですか?
控え室で私が泣いていた時、福娘同期のみんなが励ましてくれたんです。とても過酷なスケジュールで知られる福娘のご奉仕ですが、忘れられない思い出になったのは同期のみんなのおかげだったと思います。
素敵なエピソードですね!
……実は今日、お話したいことがあるんです。それが、福娘の活動で出会った方々への感謝の気持ちです。私にとってその方々との出会いはとても大切な出来事でした。その内の1つが同期のみんなとの出会いです。皆様への感謝をお伝えできる機会なんてそうそうないので、他の方々のこともお話させていただけませんか?
「人は出会った人と言葉で形作られていく」と思います
もちろんです!
ありがとうございます!この場を借りて感謝したい方があと2人いらっしゃいます。1人目は、福娘が振袖や千早や烏帽子でご奉仕できるようにお世話をしてくださる紅白の巫女姿の方々です。ここではアシスタントさんと呼ばせていただきます。アシスタントをされるのは前年まで福娘として活動しておられた先輩方で、皆さん優しくて素敵な方ばかりでした!
その中に、ミスキャンパス関西学院2021のファイナリストや雑誌『Ray』の読者モデルなどとして活躍されていた奥田歩美(おくだあみ)さんがいらっしゃいました。現在は山梨放送のアナウンサーとしても活躍されている歩美さんですが、華やかな経歴をお持ちなのに、陰になって支える立場も厭わない慎ましさは女性として素敵な資質だなぁと感じました。歩美さんからは、表の世界で活躍されていても影で支える立場として働く謙虚さを学びました。
2人目は、吉澤真彩(よしざわまや)さんです。真彩さんは私の代の前年度の福娘代表だったので、インスタグラムなどでお見かけしていた憧れの存在でした。全く接点はなく私が一方的に憧れていただけなのですが、福娘に応募する勇気も実は憧れの真彩さんから頂いたんです。また、私が現在所属しているセント・フォースsprout(学生アナウンサーの事務所)も真彩さんが所属されていたことで知りました。真彩さんを通して引っ込み思案の私でも福娘や事務所などたくさんのことに挑戦することができ、感謝しています。
皆さんの良いところがとても伝わってきます。
良かったです!私は「人は出会った人と言葉で形作られていく」と信じています。母校の恩師、習い事の師、友人、先輩など、人生の節目で私の背中を押してくれた人や学びを得た人がたくさんいます。例えば、受験生の時に不安で仕方がなくただがむしゃらに勉強していた私に恩師がかけてくれた言葉や、大叔母が亡くなる直前にくれた言葉など、私の背中を押してくれた言葉や出会いは必ず書き留めて宝物にしています。
私自身に記事にしていただけるような内容は多くないのですが、これまで出会った方々が私にとって一番の自慢なんです。なので「今日は絶対にお話するぞ!」と思ってメモをびっしりと書いてきました(笑)
すごい!マメですね。確かに藤村さん、インスタグラムもすごく長文でマメな印象でした。
長文が正しいのかはわかりませんが、SNS発信にまだまだ不慣れなので、ただ感じたことを素直に書き留めています。伝えたいことが多くて文章をうまくまとめられていないから長くなってしまっているのかもしれません。これを見た友達からは「やっぱ他の子とは違って古臭いね。」と言われました(笑)
それにしても藤村さんはどこまでも他人のことばかりで面白いです。
本当ですか?私自身にはまだ「これを成し遂げた」と話せることがないだけかもしれません。あとは言われてみればもともと自分にそれほど関心がないタイプではあります。今でも服はお姉ちゃんのお下がりを着ていますし……(笑)
なので、こんな私にとって福娘の経験は本当に大きなステップになりました。十日戎当日、参拝者の方々には「遠くからあなたの笑顔を見て福をもらえそうだったから来たんだよ。」、「あなたに福笹をもらえていい一年になりそうやわぁ。」などと言葉を掛けていただいたんです。私こそ福をもらったような気持ちになれましたし、私から福笹を受け取ろうと列に並んでくださっている参拝者の方を残してお昼休憩に行く時は、離れるのが名残惜しかったのを覚えています。
改めて福娘の経験を振り返ってどうですか?
福娘に挑戦したこと、ステージで固まって言葉が出なくなったこと、その後たくさんのご参拝者の方から声をかけていただいたこと、失敗を含めた全てが学びでした。いつかもっと成長して、私も誰かに「夕鶴羽と出会えて良かったな」と少しでも感じてもらえたらいいなと思っています。出会った方や頂いた学びに恥じないように、応援してくれたり背中を押してくれたりした大切な人たちをがっかりさせないように、少しずつ成長できたらいいなと思います。
実は体育会系サークル所属!“洋上のチェス”の虜です!
福娘の話を通して藤村さんの誠実な一面がたくさん知れました。遅刻とか一切しなさそうです(笑)
とんでもない!実はなんとか時間に間に合わせるタイプで、いつも駅を走っています(笑)ですが、早起きに関しては最近少し慣れてきました。というのも、所属しているヨットサークルの活動で、週2日朝早くから逗子市の海に集合するからです。
ヨットサークル、すごく意外です。
私、中高は吹奏楽部で活動していてずっと誰かを応援する側だったんです。なので校庭で演奏練習している時、応援される側の運動部のみんなが練習に打ち込むのを見て「私も何かスポーツに打ち込んでみたい」と思っていました。それで1年生の春に試乗会に参加したんです。ヨット上での爽快感とサークルの雰囲気にすごく惹かれました。でも、その時は入部を諦めたんです。
どうしてですか?
もう一つ所属しているサークルの人たちも大好きだったから、自分のキャパシティや要領を考えたときに、学業とその他の活動を両立させられる自信がなかったからです。でも、どうしても諦めきれず、1年生の秋から途中入部することにしました。想像していた通り両立はすごく大変ですが、たとえ無理してでも入りたい魅力があったので後悔していません。出遅れた私にも優しく丁寧に教えてくださる先輩方や明るく受け入れてくれる同期には感謝しています。
普段、どのような活動をしているんですか?
年に数回大きなレースがあるのでそこで結果を出せるように練習します。
ヨットって2人で乗るんです。前に乗る「クルー」という役と、後ろに乗る「スキッパー」という役があります。クルーはヨットの3枚帆のうち1枚目の形を整えることで船の傾きをコントロールしたり、レースではコースを引くという役割も担ったりします。またスキッパーは2枚目の帆を操ることで船のバランスをコントロールし舵を取ります。お互いにコミュニケーションを取りながらゴールを目指せるというところもレース競技が好きな理由の一つです。
すごく体力が要りそうですね。
案外体力はそんなに使わないんですよ。というのもヨットって“洋上のチェス”と言われるくらい頭脳戦なんです。ヨットのレース競技で決まっているのはスタートとゴールの地点だけなので、勝負の結果はコースをどれだけ早く回って帰れるかに懸かってきます。そのためどんなコースで進むのか、どこで方向転換するのかを自分たちで決めなければならず、体力というより頭を使います。
頭の使い方はもう慣れましたか?
まだまだ勉強中です……。波の高さも風の強さも日によって変わるので、コンディションに合わせた戦い方をしなければならないところに難しさを感じています。なので、例えば風が10何メートル吹いているときや体感マイナス15度の冬の中、あるいは夏のめちゃめちゃ暑いかんかん照りの中などではどうやって舵を取れば良いのかについて先輩に教えていただいたり本を読んだりして知識を蓄えています。
実は私、他の活動のためにサークルをお休みすることがあり、満足できる参加率ではないんです。時には私がこのサークルに所属していることでみんなに迷惑をかけている気持ちになります。それでも続けていられるのは「ヨットがどうしても好きだ!」という気持ちとこのサークルのみんなの雰囲気の良さです。
“雰囲気の良さ”って具体的にどのような感じですか?
みんなとにかくヨット愛に溢れています。この間みんなでたこ焼きを食べたんですけど、気づけばたこ焼きが入っている竹の皮でできた舟型ケースをヨットに見立てて競技の話をずっとしていました(笑)
あとは、みんな嫌な仕事も自ら進んでやるような素敵な人たちなんです。例えば、着艇したあとに船を片付けることを「解装」というのですが、真冬の解装はかじかんだ手で細かい部品を扱うので、その冷たさは痛いほどだし、冷たい水で船体を洗うのも本当は辛くなります。今すぐ暖かい室内に行きたくなってしまうときもあります。それでもみんな「自分が楽をしたい」ではなく「自分に何ができるか」を探してお互いにねぎらいあっているんです。そんなみんなが心から大好きだし、私もそんな人にならなくちゃと考えさせられます。
心温まるお話ですね。最後に今後の目標を教えてください。
いつか「私はこのサークルのセイラーだ」と胸を張って言えるように、ヨットのレース競技だけではなく、ヨットの構造や手入れなどヨットに関すること全てに詳しくなりたいです。
ヨット以外の活動が忙しくなるにつれて、「このサークルを続けていけるのか」、「辞めるべきではないのか」と悩んだこともありました。ですが、私はやっぱりヨットが好きです。みんなの愛あるお叱りや助けを得ながら今後も頑張りたいと思っています。