美学生インタビューInterview
浪人ではなく「ダブルスクール」という選択
田丸さんは2つの大学に通っているそうですね。
そうなんです。ダブルスクールという形で、昭和女子大学とテンプル大学に在籍しています。両方4年制の大学なんですけど、昭和女子大学に関しては卒業に必要な単位を2年生の間に取り終えて、今はテンプル大学のみに通っているという感じです。
ものすごく特殊ですね。そもそも何故ダブルスクールをしようと考えたのでしょうか?
私は小さい頃から英語が好きで、英語で何かを学びたいと思っていたんです。でも、大学受験で第一志望に合格できなくて……。それで浪人するか悩んでいた時に、高校の先生からこういう手もあるよって提案してもらったのがダブルスクールという形でした。
もう1年頑張って志望校を目指すという選択肢もあったんですけど、それだと同学年の子たちから遅れをとってしまう。何が自分にとってベストか考えたときに、浪人して勉強を続けるよりはその時間を新しいことに使って自分の視野を広げたいと考えました。受験が上手くいかなかったのが悔しくて、人と違ったことがしたいとムキになっていたというのもあるかも知れません(笑)
2つの大学に並行して通っていた時期もあったんですよね?
ありました。その時は、月曜は昭和女子大学、火曜は午前にテンプル大学・午後に昭和女子大学、水曜は休みで、木曜は午前に昭和女子大学・午後にテンプル大学、金曜は昭和女子大学……というような生活を送っていました。加えて早朝にスタバ、授業が終わったあとに歯科医院で助手のアルバイトをやっていたので頭の中はごちゃごちゃでした(笑)
ハードすぎます……。すごい精神力ですね。
「遊んでるように見えて実は頑張ってる」というのが私の大学生活のモットーなんです。インスタグラムを見るとサロンモデルをやっていたり遊びの投稿もあったりして、毎日楽しそうにしてるな〜、余裕そうだな〜って周りの人には見えると思うんですけど、見えない所で日々努力を続けています。勉強も遊びも妥協したくないんです。
ちょっとした自慢話をすると、1年生の時に昭和女子大学の成績優秀者に選ばれて、テンプル大学には奨学金免除で通っているんですよ。自分の中では目標を達成できてるんじゃないかって思っています。
テンプル大学というのは初めて聞いたのですが、どんな大学なんですか?
アメリカのペンシルベニア州に本部のある大学で、私が通っているのはその日本校です。キャンパスは世田谷にありますが、授業はすべて英語で、日本人の学生は1割ほどしかいません。
授業の様子が日本のそれとは違い、最初は驚きました。例えば、日本の学校では先生が一方的に講義をするのが一般的ですが、外国の学校では少しでも疑問に思うことがあれば手を挙げて発言したり、反論したりするのが当たり前です。
また、海外の学生は自分の考えを積極的に述べるのと同時に、他人の意見を聞く力も優れているということにも気付きました。日本では黙っている人がいたら勝手な想像で「この人はこう考えている」とか「同意している」って決めつけてしまいがちじゃないですか。アメリカの学生は「あなたはどう思うの?」って積極的に尋ねるんです。
私は自分の英語力に自信がなく、ネイティブの人の前で発言するなんて馬鹿にされないかなと最初は不安だったのですが、単語が出てこなくても待ってくれるし、話すのを手伝ってくれるので助かりました。そんな環境で過ごす中で私自身、伝える力と聞く力が養われたように思います。
アナウンサーは小さい頃からの夢!でも、他の可能性も探りたい
将来の夢について教えてください。
小学生の頃からアナウンサーに憧れていました。もともと目立つことが好きで声もよく通る方だったのでキャンプファイヤーの司会とかもやりましたし、周りの人から「アナウンサーに向いてるんじゃない?」って言われることも多かったんです。また、東日本大震災の時にアナウンサーの方が冷静に情報を伝える様子をテレビで見てすごいなと思ったのもきっかけの一つでした。
幼い頃からアナウンサーに興味があったんですね。
最初はただの憧れで、本気で目指し始めたのは高校1年生の時です。フィリピンの語学学校に2週間研修に行く機会があったんですけど、その時、現地の先生にこう言われたんです。
「僕は今は英語の先生をしているけど、もともとはパイロットになることを夢見ていた。フィリピンは貧しい国だと教えられてるかも知れないけれど、僕にも夢があったんだ。君たちは裕福で、恵まれていて、自分のやりたいことや夢を叶えられる境遇にある。でも、じゃあ貧しい僕らが夢を持っていないかというと、そうではない。誰にだって夢はあるし、明るい側面もある。貧しい人でも夢を持つ権利があるんだ。どうか日本の価値観で決めつけないでほしい。そのことを君が日本に帰ってみんなに伝えてもらいたい。」
この言葉を聞いて、漠然としていたアナウンサーという夢が明確になりました。
どんなアナウンサーを目指したいですか?
現代、SNSなどでは“今、何が起きているか”が注目されがちじゃないですか。でも、私は「今」だけじゃなくて、「今まで」と「これから」にフォーカスして掘り下げたいんです。フィリピンの先生のエピソードもそうですし、テンプル大学でもさまざまな国の学生と話す中で、人にはそれぞれの背景があるということを実感しています。その人の過去や、今の立場に至るまでの背景に焦点を当てて人々に伝えていけるような、そんな仕事がしたいです。
素敵な志ですね。田丸さんは今3年生ですが、就活の真っ最中ですか?
はい。でも、ちょっと複雑な事情があって……というのも、テンプル大学は9月卒なんです。本来私は25年卒の学年なんですが、電話で問い合わせると大体のテレビ局が「26年卒として入社試験を受けてください。」とのことで……。中には9月卒でも頑張りを認めて入社資格をあげたいと言ってくれる局もあるのですが、どうなるかは未定です。
それに最近、他の業界も視野に入れたいなと考え始めたんですよ。周りの大人の方にダブルスクールをしていることを話すと、「アナウンサーという職業に縛られなくても、他に出来る仕事があるんじゃない?」って言っていただくこともあって、自分の力が最大限発揮できる職業についてもう少しじっくり考えてみてもいいかなって。もちろんアナウンサーは昔からの夢なので目指しますが、新しい可能性も探っていきたいです。
そういう点では25年卒じゃなくて良かったなと思いますね。1年先延ばしになったことで自分を見つめ直す時間ができた、と最近は前向きに捉えています。