美学生インタビューInterview
『自分を信じて、努力し続けることを忘れないでほしい』
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1.まずは自己紹介からお願いします。
神戸女学院大学音楽学部3回生の末松里菜です。打楽器を専攻していて「マリンバ」という鍵盤楽器を専門に勉強しています。百貨店のファッションショーや美容院のヘアーショーに出たり、専門学校でメイクのモデルもしています。
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2.マリンバって、どんな楽器なんですか?
マリンバはすごーくわかりやすく言うと木琴の仲間ですね。違いは鍵盤の幅が広く厚みもあり、共鳴菅という鍵盤の下にあるパイプが長いことです。木琴よりも音が柔らかく重低音がすごく綺麗に響きます。鍵盤の数も多いので表現できる音の数も多いんです。演奏はマレットという先に毛糸を巻いたばちを使うんですが曲によっては片手で2本以上、両手で4~6本持って演奏することもあります。でも一般にはまだあまり知られていなくて「マラカス?」とか言われたこともありますし、演奏会で感想をもらった時は「木琴がよかった」って書いてありました(笑) もうちょっとマリンバのことを広げていかないとなって思っています。
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3.音楽学部ということは大学では音楽漬けの生活ですか?
みんなすごく練習していて、私もひたすら練習しています。時間がなくても如何に質のいい練習をするかを考えていますね。他学科の人が空き時間に英単語を覚えたりするじゃないですか? そんな時間にとりあえず練習しよーって感じで演奏しています。でも神戸女学院はどの学部でも基本的に全ての授業を受けられるので音楽以外のこともしていますね。 ちゃんと息抜きしないと嫌になってしまうので、私は食品学とか自然観察をする授業とか自分の趣味に近いものを入れて楽しんでいます。
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4.楽器の練習や演奏以外にはどんな音楽の授業があるんですか?
音楽の歴史を学ぶ音楽史の授業もあります。この授業では曲の時代背景や作曲者の心理とかを学ぶのでそこが面白いです。長調、短調とか音符の組み合わせによって明るい時と暗い時がパキっと分かれるんですけど、ここちょっと変わった音を使っているなって時があるんです。じゃあそこはなんでだろうって考えると作曲者が病気をしていたとか父親が亡くなって精神的に病んでいたとか雰囲気が変わった原因があったりします。それを知っていると弾く時にその部分に感情移入ができるんです。
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5.演奏するのが難しい、感情移入のしにくい曲ってあるんですか?
先生からよく「色を付けて弾きなさい」って言われるんですけど、恋愛関係の曲がすごく難しいです。カルメンっていうオペラがあるんですけど知っていますか? 何人もの男性をどんどん誘惑していく女性の話なんですが、 そういう気持ちで弾きなさいって言われます(笑) でも私は恋愛経験が殆どないのでその感じが想像できないんです。私が今一番好きで、いつか演奏してみたいと思っている曲が「マリンバ・ダ・モーレ」という曲で「愛の喜びは1日しか続かないのに、苦しみは一生続くんだ」 という愛の歌なんですが「絶対ダメよ、弾けるわけないでしょ」って言われました(笑) 「ゆっくりした曲の方が音の数が少なくて簡単じゃん!」と思われるかもしれませんが、感情を込めなければいけない分、難しいんです。この音はこうしたいと1音1音、丁寧に決めていくのでテクニックだけでは弾けません。それに奏者に恋人がいるかどうかでも演奏が変わってしまうんです。曲に入り込むと知らないうちに自分の喜怒哀楽が現れてしまうので、それが先生にはバレバレなんです。先輩の話なんでけど彼氏とケンカしたときに「今日あなた彼氏さんと何かあったの?」って言われていました。もう占い師みたいな状態です。でもそれだけ先生は生徒の事をしっかり見てくれています。
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6.珍しい楽器ですが、マリンバを始めたきっかけは?
小学校高学年頃に「太鼓の達人」というゲームが流行って私はそれがすっごい上手だったんです。私の母は音大出身で、それを見て「この子ちょっと打楽器の素質があるんじゃないの」と思ったらしく母にやってみないと誘われたのが始まりです。その頃は音楽教室に通ってピアノを習っていたんですが、そこで鉄琴を叩いたことがあり、すごく楽しかったので母からマリンバを勧められたときは嬉しかったです。
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7.かなり昔から音楽をされていますが、音楽で悩むことってあるんですか?
去年はいつも本番で練習通りにできずスランプでした。頑張って普段以上に練習してるのに、途中で記憶がパッて飛んでどこを演奏しているか分からなくなったりして、どうすれば良いのかずっと悩んでいました。でも去年の12月にチャリティーコンサートで、いつものような高いステージではなくお客さんに近い距離で演奏したんですが、コンサート終了後、はちきれんばかりの拍手や「感動したよ!」っていう生の声を頂いたんです。それが自信の回復に繋がって悪循環の輪がプチッと切れるきっかけになりました。あとから聞いた話ですが、会場に来ていた10歳の女の子が学校の参観日に半分成人式という題のスピーチで「お母さんと行ったコンサートでマリンバを弾いていたお姉ちゃんの姿を見てとても感動しました。私もあんな演奏ができるようになりたいと思うので、大きくなったら絶対マリンバの勉強をしに神戸女学院に入りたいです!」と言ってくれたそうです。その話を聞いて本当にビックリして、嬉しかったんですが何て反応したら良いか分からず固まってしまいました(笑) 「こんな私でも人に夢を与えられる演奏ができるんだ」と思いもしなかったことに気付けて、もっと頑張ろうという気になることができました。
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8.モデルもされてるということですが、始めた時に苦労したことって何ですか?
ファッションショーでのことなんですが初めは普段の歩き方と全然違うのでちゃんと歩けなかったです。教えてもらってもその歩き方ばっかり意識しちゃってぎこちなくなっていました。ステージの上では常に前を向いていないとダメなので落ちないように先端までの歩数を決めているんですけど、それが狂ってしまい十数センチのヒールを履いているので本当に戸惑いました。
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9.ショーで服を綺麗に見せるための工夫ってありますか?
例えばフワフワなスカートやワンピースは親指とかでちょっと触れて、フワンフワンとなるように歩くんです。多分見ている人からはわからないんですけどそうやって軽やかな雰囲気を出しています。他には店員さんに服の特徴を聞いたりしますね。「どういうところが売りなんですか」とか「こうしようと思うんですけど、どうですか?」って。それでアドバイスを頂いたりします。求められていることと違うことをするのは申し訳ないし自分が着た服は売れてほしいので、ショーが終わった後に全部完売したよって聞くとすごく嬉しいですね。
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10.これから先の目標はやはりプロの演奏家ですか?
私がマリンバを始めた時は全国区でも通用する演奏家になるのが目標でした。なので今年の夏~冬にかけて行われる大きなコンクールに挑戦しようと思っていて、そこで自分の納得できる結果が残せたらプロの演奏家への道を考えようと思っています。でもプロになれるのは本当に少数なので、海外へ留学したり大学院に行ってもっと腕を磨かないとダメなんです。もし留学するとしたら教えてもらいたいと先生がいらっしゃるドイツに行きたいですね。
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11.最後に美学生図鑑を見てくれている学生へメッセージをお願いします。
今を後悔しないように何でも怖がらずにやって欲しいですね。やらなくて後悔するほうが絶対ダメだと思うし、大人になってから「あの時やればよかったなー」って思うくらいなら今無理してでも色んなことをやったほうが良いと思います。私のモットーは「努力することを忘れないこと」と「チャレンジ精神」なんです。上手く行かないって分かっていても何かに挑戦すれば絶対に得るものがあると思います。なので私はなるべく無理と思わずに何事にも挑戦することを忘れないようにしています。だからみなさんも自分を信じて、努力し続けることを忘れないでほしいですね。
里菜さん、お話ありがとうございました! (写真=松下順子、文=小林純也)