美学生インタビューInterview
トイレのマークを変えたい!大学ではSDGsを勉強中
大阪府立大学に進学した理由を教えてください。
私は高校生の頃から国連のユネスコが主催する教育プログラムに参加していて、その活動でカンボジアのNGO施設へ行き、子どもたちと交流する機会がありました。
子どもたちはすごくエネルギッシュで、一緒に遊んでいるとまっすぐでキラキラとした笑顔をたくさん見せてくれたんですけど、実はその子たちの多くは人身売買や児童労働、虐待の被害にあっていて、交流した時にも体には過去の「傷跡」が残っていたんです。目の前で無邪気に遊ぶ子どもたちが、ここに保護されるまでは安全じゃない場所で生活していたんだ、って考えると胸が締め付けられる想いでした。
交流をする中で仲良くなった子に「ここでの生活の何が好き?」と聞いたら「勉強することが好き!」って言うんですよ。私たちは当たり前のように教育に受けてきたけど、この子たちは受けられない環境にいて、同じ地球で同じ時間を過ごしているのに、生まれる場所が違っただけで教育を受けられる機会や未来の選択肢に差があるのはおかしい!って想いが湧いてきて。
大学でこうした社会問題について学びたいと考えた時、大阪府立大学に『教育福祉学類』という教育と福祉を掛け合わせた観点から人間支援について学べる学部を見つけて、興味を持ったというのが経緯です。
きっかけは高校生の頃の体験なんですね。ユネスコの活動に参加したのはなぜですか?
高校にNGOやNPOの方が来てお話をしてくださる機会があったんですね。そこでたくさん感想を書いていたら、先生がこの子は社会福祉に興味があるだろうって感じて声をかけてもらったのがきっかけでした。
活動内容としては『SDGs(エス・ディー・ジーズ)』という国連で採択された持続可能な社会を作るため世界が取り組むべき17の目標などについて、考え方を学んだり、意見交換をする学生サミットに参加していました。
大学ではどんなことを勉強してるんですか?
私の通っている学部では、教員や保育士、社会福祉士やスクールソーシャルワーカーの資格が取れて、私は社会福祉と保育を学んでいます。社会福祉では、さまざまな問題に苦しむ人たちの問題を解決するために社会的資源についての知識や対人援助で必要なスキルを、保育では、教育の基本的な理念や子どもたちの心身の発達など保育者として必要なことを学んでいる感じです。
あと高校の頃からお世話になっている教育福祉学類の教授の下で引き続きSDGsについても学んでいて、今、私が一番興味を持ってるのが『ジェンダー』の分野です。
ジェンダーって言っても幅広いですよね。
大学内で実現したいことが1つあって、街のトイレって男女に分かれてますよね。女性用だったら赤いスカートみたいな感じのマークでハッキリしてるじゃないですか。
それが分かれてないのが多目的トイレなんですけど、今は身体障害者を表すような車イスの絵が主張されてて、自分の性の認識が男性にも女性にも当てはまらない人はどこに入ったらいいんだろうとか、自分の存在が認めらえてないっていう思いがあるそうなんです。そこを変えたいなって思って。
どういう風に変えたいんですか?
例えば本来のトイレの目的を示す便器のマークにするとか、誰でも使えるとわかるマーク変えていきたいと思っています。私の通っている学部のトイレはもうすでに変わっていて、これをキャンパス全体に、そして世の中にも広めていきたいという想いがあります。
今、世の中にLGBTに関する考え方が広がってますが、それってLはレズだとか特定の人の性を表してるじゃないですか。そうじゃなくて最近はSOGI(ソジ)という考えもあって。『Sexual Orientation(性的指向)』と『Gender Identity(性自認』の略なんですが、世界中の全員がそれぞれ違った性を持っているという考え方で、実はジェンダーってみんなに関わる話なんです。
どんな環境でも“声”を上げられる人でありたい
SDGsの17の目標のうち、ジェンダーや性に興味を持ったのは何か理由があるんですか?
もともと友人に色々な性の子がいて、辛い想いを話してくれることがあったんです。それを聞いて、せっかく自分がジェンダーについて学ぶことができるなら、学んだ知識で何かを変えられたらって思いました。
では、将来はそういう問題を解決する仕事に就きたいですか?それとも社会福祉士や保育士など現場で働く仕事をしたいですか?
すぐに現場で働くというより、まずは“伝える”という仕事をしたいと考えています。
例えば、TBSはSDGsを取り上げていこうという意識がすごく強くて、テレビやラジオで放送している企画はどれも本当に勉強になります。特にTBSラジオの『アシタノカレッジ』が大好きなんです。将来もし自分がアナウンサーになれたら、自分が学んでいる色々なことからも何か伝えられることがあればいいなって思います。
アナウンサーになれたらこんな企画をやりたいっていうのはありますか?
アナウンサーは伝える立場の仕事なので番組の企画や制作に関われる機会は少ないと思うんですけど、将来的に出来るのであればあります!
普段生活をしてる中で感じることなんですけど、様々な分野でSDGsに繋がる素敵な活動をされている方ってたくさんいるので、そういう方たちの活動や考えを紹介していきたいです。
今の段階で注目している人や団体、活動はありますか?
『キッズゲルニカ』という活動をしている阿部寿文先生って方なんですけど、『ゲルニカ』ってご存じですか? 戦争の悲惨さを描いたピカソの巨大な絵で、それと同じ7.8m×3.5mのキャンバスに子どもたちと一緒に平和をテーマにした絵を描くんです。
先生は世界各国を回ってこの活動をされていて、例えばイスラエルの子どもたちが描いた絵には対立しているパレスチナの国旗も一緒に描かれていて、お互いの理解を通じて未来を作っていくという願いが込められているそうです。先生は「絵は言葉を超える。」「環境や文化の背景が違っても愛し合うことは一緒。」と仰っていて、それが私の心の中で強く温かく残っています。
すごく勉強されていますね。驚きました。では、少し意地悪な質問ですが、アナウンサーは時に女性らしさを求められることもあると感じます。ジェンダーを学んでいる祐里菜さんはそのあたりどう考えますか?
私はメイクやファッションが好きですが、アナウンサーとして表に立つのであれば、あまりこうしなければいけないって考えを持たずにいたいと思ってます。
フリーアナウンサーの宇垣美里さんが『百女百様~街で見かけた女性たち』という本を紹介しているんですけど、自由な装いをする世界の女性を取り上げたこの本を読んで胸がいっぱいになったそうなんですね。
というのも「男性人気が欲しいならもっと身体のラインが分かる服の方がいいよ。」という風に言われることも多かったそうで。それに対して宇垣さんは「私は私のために、私が選んだ服を着てる、誰かに見せて喜ばせるためじゃない。」と仰っていて、この言葉にとても感動しました。
だから、私自身も嫌なことは嫌と言える人でありたいし、私は私で好きな恰好をしたいですね。アナウンサーが女の子らしさとかを求められるとこがあることについては、自分自身が好きなことだったらいいけど、したくないのに強制させられる環境にはきちんと嫌と言いたいです。
きょうお話を聞いてると自分の意見をすごくしっかりと持っているので、祐里菜さんはアナウンサーよりもジャーナリストやディレクターに向いているように感じます。
そこに関してはいっぱい考えることがあって正直迷ってる部分もあります。ディレクターもジャーナリストもすごく素敵な仕事なんですが、人に何かを伝える時って伝え方や言葉のニュアンスによって伝わり方が変わってきますよね。
正しい情報を正確に伝えることや、自分の想いをそのまま相手に伝えることってすごく重要で、私はまだまだ足りないところがたくさんあるんです。だから、アナウンサーを目指す中で、その能力を磨いていきたいんです。
今年、今宮戎神社の福娘をさせてもらったんですが、同じ福娘の子やアシスタントで携わってくささった先輩とか、周りにアナウンサー目指してる人たちが多くて、その人たちを見てると話しや魅せ方がすごく綺麗だな~って思うことがいっぱいありました。
“福”を届ける仕事と“伝える”仕事
福娘経験者でアナウンサーの方って多いですよね。
福娘の中にはアナウンサーになることが決まってる方もいて、お話をさせていただいていると話し方がすごく綺麗でした。そして自分を着飾らず、みんなから上手く話しを引き出したり場を和ませたりしていてすごいなって思ったんですよ。アシスタントをしてくださった福娘OGの方も立ち振る舞いから学ぶところがすごくありました。
実際に福娘をやってみてどうでしたか?
私にとって参拝者の方々に“福を授ける”ということを出来るのが嬉しくて。私が大学で学んでる福祉は「福」と「祉」、どちらも幸せという意味があるんですね。一人ひとりが尊厳を持ってより良い人生、『Well being(幸福)』を実現出来るよう専門知識を学んでいるので、誰かに福を届けられるのは素晴らしいことだなって。
福祉と福娘、そういう面ではリンクする部分があるんですね。
今は特に辛い思いや、大変な思いをされてる方々がたくさんいらっしゃるじゃないですか。だから、参拝者の方には「あけましておめでとうございます」って満点の笑顔で言うように心掛けていました。
来られた方から「ありがとう!これで良い1年になるわ!」って声を頂くこともあって、その人の活力になれたんだって思うと嬉しかったです。ご奉仕をしてる最中に想いが込み上げてきて泣きそうになることもありました。
福娘って寒くて大変と聞きますが、温かい気持ちで頑張れたんですね。
その気持ちがあったのは大きいです。朝5時に起きて真っ暗な中で着付けをしてもらって、寒い中、夜までの活動は本当に大変だったんです。
今まで心の余裕がなくなるような忙しい中で他の人のことを考えて行動するっていう経験はあまりなかったんですが、福娘のみんなは助け合いの気持ちを持っていて、例えば休憩に入ると被っている金色の烏帽子や羽織ってる千早は脱いでご飯を食べるので、また着るには結構時間がかかるんですよ。
でも、時間は厳守なんです。そんな中でみんな自分のことだけに集中するんじゃなくて、困ってる人がいたらお互いに助け合いが自然と出来ていて。改めて人と人の関係の大切さに気付くことができたのは大きかったです。そういう温かい気持ちがあったから頑張れましたね。
貴重な経験が出来たんですね。祐里菜さんは今2回生で大学生活は折り返し地点です。最後に残りの半分に向けての抱負を教えてください。
福娘の活動でアナウンサーを目指している方の話し方がすごく綺麗だなって思ったので、私自身、アナウンススクールに通ってお勉強させてもらいたいなって気持ちがすごく出てきました。
あとは、福祉や教育の勉強をしている中で、今までは点と点って感じでポンポンポンと知識が入ってきてたんですけど、それがだんだんと線になって結び付いてきている状態で、3回生4回生ってなるとまたそれが繋がって面になっていくと思うんですよ。そういう意味でこれからは大事な時期なので大学の勉強も頑張りたいと思います。
学校の勉強しながらSDGsの活動をして、さらにアナウンススクールとなるとかなり多忙ですね。大丈夫ですか?
私自身、不安はあります。あるんですけどそれぞれを中途半端にしたくないので、その時々で自分にとって今、何が一番大事か冷静に考えようかなと。
なんでアナウンサーになりたいと思ったかというと、私自身が勉強したり、体験した現場のことを伝える能力を身に付けて、実際に発信していきたいという想いが強くあるんです。その気持ちを常に持ち続けて頑張りたいと思います。