美学生インタビューInterview
『目の前のことに、一生懸命になること』
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1.自己紹介をお願いします。
神戸市外国語大学ロシア学科の4回生、石田裕平です。1年間カナダに留学していたので、大学生活は5年目になります。神戸市外大では朝活をしたり、教職勉強会を行なっています。それとCCC(シーシーシー)という「コミュニケーション・クリエーション・チャレンジ」をテーマにした、気軽に英語を喋れるパーティを、毎月最終土曜日の夜に開催しています。後は、他の学生団体のイベントにもよく参加していますね。
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2.カナダへの留学ではどんなことを学ばれていたのですか?
英語教育を学んでいました。ロシア学科なんですが、実は英語の方が好きなんです(笑)。なので、大学3回生になる2010年の春から1年間カナダへ留学していました。最初の3ヶ月は語学学校に通って、残りの期間は英語教育に関わっていました。TESOL(テッソル)*というプログラムがあって、まずはFor children(子供向け)、次はmiddle school(中高生向け)、更にAdvanced(一般向け)というのを取るんですね。
そして最後の2ヶ月は教育実習でした。最初は、小学校へ行って授業がどのように行われているのかを学んで、次は海外からカナダに留学に来ている中高生に英語を教えました。最後は自分が学んでいた語学学校で今度は教える立場に回りました。英語に対してすごくストイックに学んでいましたね。極力日本語を話さない環境作りを心掛けていました。「人に教えるからには、教わる側よりも自分の方が英語が上手い状態じゃなければならない」という意識が常にあり、頑張りましたね。
*TESOL:Teaching English to Speakers of Other Languages. 英語以外の言語を話す人に英語を教える技術のこと。英語教師(英語が母国語でない生徒に英語を教える)を目指す人のために用意されたコース。 -
3.裕平さんの中で留学をする前と、した後で変化したことはありましたか?
当たり前なんですけど、英語力が向上しました。それと自分の価値観が変化しましたね。小さいことなんですけど、僕が暮らしていたカナダの街ではバスや電車の中が騒がしいのは当たり前だし、携帯電話も普通に通話しているんですよ。日本で常識って言われていることも、一歩外に出たら常識じゃなくなるんだと実感しました。だから本当に大事なのは、「何でそれをするのか、何のためにそれがあるのか」ということを考えることだと思いました。理由も考えず、周囲がしているから自分もしていたことが沢山あることに気付けたことは、自分の中で大きな変化でしたね。
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4.留学に行きたいなと思っている人にアドバイスはありますか?
留学したから英語を喋れるようになるのではないよ、ということを忘れないでほしいです。日本で英語を学ぶ意欲を持てない人は、海外に行っても学べないと思うんです。結局海外に行っても周りに流されてしまう人が多いように思いましたね。学ぶ気持ちを強く持っている人が、留学してすごく伸びているように思います。
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5.帰国してから何か気持ちに変化はありましたか?
そうですね、帰国してからCollege caféというイベントで“教育”についてプレゼンをさせてもらう機会があったんです。College caféは龍谷大学の山川勝弘くんが主催している「大学、学部、学年を超えて多様な学生が集まり、一つのテーマについて考える」というプロジェクトなんですよ。でも全然喋れなくて…。僕は今まで「教育に関わりたい、考えたい」って言っていたのに、「今の教育の問題はここで、こうした方がいい」なんてことは考えられていなかったんです。その時College cafeに来ていた方や山川くんは、社会について疑問を持ち、更に考えながら活動をしていて本当にすごいなと思いました。終わった後、自分の不甲斐なさが悔しくてたまらなくて……。留学をしたことでも行動力が付いたんですけど、このCollege caféを経て本当の意味で行動を始めることになりました。
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6.教育に携わりたいという気持ちはどこから湧いてくるのですか?
今塾講師のアルバイトをしているんですけど、教えることがすごく楽しいんです。生徒が頑張っている姿を見るのも楽しいし、責任感は重いんですけど、やればやるだけ返ってくるというやりがいを感じますね。僕は、人を褒めて伸ばしたいタイプなんですよ。自分自身も褒められるのが好きだし、ちょっと褒められることによって、どんどん伸びていく子がいると思うんです。
この間、勉強があまり得意じゃない子を褒めたんです。いつもあまり表情を変えないような子なんですけど、僕が褒めた時にその子が見せてくれた笑顔が印象的で、言葉にしづらいんですけど、すごく嬉しかったですね。それから頑張っている姿をよく見るし、そんな風に子供の成長に関われる教育がすごく好きなんです。 -
7.逆に叱らないといけない時もあると思うのですが、どうお考えですか?
叱るときはありますね。まだまだ経験が浅くて難しいんですけど、自分の中にしっかりとした軸を持っていたら叱れると思うんです。例えば、「友達を大切にする」っていう軸があったら、友達を大切にしなかった子は叱れると思うんですよね。ただ、自分の軸がぶれていると叱りたくても叱れないですね。言ってることとやっていることが違ったらダメですよね。特に子供は敏感に察知しますし、ぶれない軸を持つことは今後の課題でもあります。しっかりした軸を持つための学びを、教職勉強会でこれからも実施していきたいと思っています。
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8.将来は先生を目指されているのですか?
実は企業への就職を決めたんですよ。色んな出会いを経て、もっと物事に疑問を持って考えていかなければならないと思うようになったんですよね。そう考えるようになってから、このまま教師になっていいのかなと思うようになりました。僕が今教壇に立っても、生徒に伝えられることがものすごく少ないなと思ったんです。僕の教え子たちって、社会に出て先生になる子より企業で働く子の方が圧倒的に多いと思うんです。だから企業での経験はきっと大事な糧となると思います。
教師や公教育に関わらず、教育にはずっと関わっていきたいなと思いますね。形にこだわらなくても、“教育に関わりたい”という想いを持っていたら、何かしらの関わりが生まれると思っています。 -
9.最後に何か始めようと思っている読者の方へメッセージをお願いします。
目の前の事に一生懸命になることが大事なんじゃないかと思います。僕自身大学1・2年生の頃は、何かしたいというモヤモヤを抱えて過ごしていたんですけど、結局熱くなれるかは自分の心掛け次第だと思いました。目の前に熱くなれるものが無いのではなくて、自分自身が熱くなるかどうか、一生懸命になるかどうかなんだと思うんですよ。
経験から言うと、細部にこだわることによって、一生懸命になれると思います。塾の講師にしても普通にこなすことは出来るんですけど、話し方や1回の授業で伝えることをこだわり始めたら、勝手に一生懸命になっているんですよね。「ここまででいいかな」と思っていたことの一歩先に進んで、「ここはこうした方がいいかな」と考えることによって、自然と一生懸命になるんじゃないかな、そんな風に思いますね。
石田さん、お話ありがとうございました! (写真=松下順子、文=加藤真理子)