美学生インタビューInterview
世界の教育システムに興味があるんです
大阪教育大学に進学した理由を教えてください。
高校生の頃、SDGsに関する授業の一環で世界の教育について学びました。具体的には、貧困・難民・格差などの社会問題が深刻な国ではどのような教育がおこなわれているのかについて、グループで調べて比較するという内容です。
この授業を通して、自分が当たり前のように受けていた教育のシステムが他の国にとって当たり前ではないことを知りました。それから教育学を志すようになり、今の大学に進学しました。
では、大学でもグローバル教育について学んでいるのですか?
そうです!私の所属する教育学部には、教育養成課程と教育協同学科という2つの学科があります。教育養成課程は卒業要件に教員免許取得が組み込まれているため、教員志望の生徒が大半を占めます。一方、教育協同学科は教員にならない人が半分以上いて、比較的自由に授業を取ることができます。
私は教員を目指しているのですが、グローバル教育について学びたかったので多文化リテラシーコースがある教育協同学科を選びました。
多文化リテラシーコースではどのようなことが学べるのですか?
多文化リテラシーコースは学生の半数が留学生なので、留学生と一緒に諸外国の教育や社会問題について議論したり、日本語学について学んだりします。例えば日本語学の授業では、日本語の使い方について留学生が抱いた素朴な疑問から「確かになんでだろう」と思わされることが多くあるんです。そこで当たり前だと思っていた日本語の使い方を改めて分析できることがすごく面白いです。
印象的な授業はありますか?
ヨーロッパの教育と文化について学ぶ中で、ドイツと日本の教育を比較したことが印象的でした。
ドイツでは、10歳の段階で「職人になるのか」「勉強の道に進むのか」を必ず選択しなければなりません。そして、11歳になったら実際に決めた道に進みます。この教育には、子どもが家計の事情や親の引いたレールに従うことになってしまうといったデメリットがある反面、10歳から自分の道を自分で選択して職業訓練や勉学に励むのは効率的だという考え方もあります。このことについて様々な環境で育ってきた留学生たちと議論したんです。
福田さんはどちらの教育を支持しましたか?
個人的には日本の教育システムがいいなと思いました。ドイツの複線型教育では進路変更が難しくなってしまうので、結果的に子供の選択肢を狭めてしまう可能性があるからです。ですが、教育システムを評価する場合には、対象とする国の国民性を考慮する必要があると思います。というのも、2つはお互いに影響し合う相互依存的関係にあるからです。
日本では個人の学力や学歴が社会的に重視され、その努力が評価される一方、ドイツでは学問的な教育と職業教育の両方が同等に重視され、子供の才能については非常にシビアで見切りが早い傾向にあるようです。なのでどちらが悪いというわけではなく、各国の価値観に合ったシステムを採用することが重要だと思います。
「日本で母国語教育を発展させたい」 思いの背景に自身の“ルーツ”
そもそも教員を目指し始めたのはいつからですか?
高校2年生の時です。将来について考えるときに大切にしたのが、自分の好きなことって何だろう?という軸です。私にとって一番好きなのは“教えること”でした。
私、3歳下の弟がいるんですけど、弟が幼稚園児の頃からビシバシ勉強を教えていたんです(笑)その結果、弟は小学校にも入ってないのに漢字がある程度書けるようになったんです。その頃から、人に教えることに楽しさや面白さを見出していました。
すごい!面倒見が良いタイプなんですね。
はい。誰かのためにと思うと身体が勝手に動いちゃいます(笑)友達からはよく「お母さんみたい」と言われちゃうくらいです。その反面、自分のことになるとダメダメなんですけど……(笑)
そうなんですか?
はい。実はSNSを友達に管理してもらっています(笑)写真を撮っていただくことが好きで被写体の活動をしているのですが、せっかく素敵な写真を撮っていただいてもそれを載せることをめっちゃ後回しにしてしまうんです。そんな私を見かねた友達が「代わりに載せたい!」と言ってくれたんです。なので運営をお願いしています。本当に有り難いです……。
素敵な関係ですね。話を戻して、教員を目指した理由は他にありますか?
自分の日韓ハーフというルーツもきっかけです。私は日本語も韓国語も話せるんですが、それは自分で勉強したからなんです。ですが、例えばドイツではグローバル化が進んで多様なルーツを持った人が増えたため、外国にルーツを持つ子どもたちのための母国語教育が教育システムに組み込まれています。
それに対して、日本では母国語教育が不足しているという現状があります。私は今まで生きてきて差別を受けたことは全くないのですが、複数のルーツを持つことに対して差別や偏見があることは知っています。なので、自分のルーツを知ってもらう機会を教育のシステムに取り入れることで、それに誇りを持てるような環境を作りたいです。
3つのアルバイトを掛け持ち!生徒一人一人に合わせた指導法を模索しています
教員になるために今、頑張っていることはありますか?
塾講師を2年、家庭教師を今年の春から、留学生チューターを先々週からやっています(笑)
つい最近ですね!留学生チューターってどんなことをするんですか?
授業の中で留学生が感じたお悩みのサポートをしています。例えば、先生の発言の意味はわかるけど、意図がわからないなどの相談に乗ります。
実は1年生の頃から応募はしていたんですけど、留学生の数よりチューター希望の学生の数の方が多かったみたいで、新入生が入ってくるまで待ってと言われたんです(笑)なので、1年越しの念願が叶いました。人に教える練習になると思うのでこれから頑張りたいです。
塾講師や家庭教師の話も聞きたいです。塾ではどんなことをしているんですか?
小中学生が通う塾で10人前後のグループ授業の補助員をしたり、映像を作ったりしています。
……映像を作るんですか?
はい。この塾では対面とオンデマンドのハイブリッドで生徒を指導するんです。なのでオンデマンド用の動画を作ります。といっても編集をするのではなく、自分で教材を動かして画面越しに授業したものを録画して、それを生徒に見てもらいます。
大変だったことはありますか?
クラスがそれぞれの学年で1つしかないので、生徒の学習レベルに差があるところに難しさを感じています。例えば同じ問題が不正解だったとしても、見落としによるケアレスミスなのか、ヒントを出せば導けるのか、基礎から身に付いていないのかによって指導方法が異なります。
なので、まずは間違えた生徒がどのタイプなのかを見極める必要があります。そうすると、高難度なことを教えていたために理解が追いつかず30点しか取れなかった子でも、基礎的なことを確実に覚えさせることで点数を50点に伸ばすことができます。こんな風に生徒一人一人に合わせて教え方や教える範囲を変えることがとても難しいです。
また、苦手な教科を完全に苦手だと認識し始める時期が小学校の高学年ぐらいからなので、私が教えている年代の生徒にとっては今が大きな分岐点にあたります。ここで苦手意識を持ったまま学習を終えてしまうとその後の勉強にも響いてしまうので、その子のレベルに合わせて本当に簡単なところからできる単元を見つけて演習をしてもらうようにしています。「あ、できるんだ自分」と生徒に思ってほしいんですけど、それがなかなか難しくて苦労しています。
聞いてるだけで大変さが目に浮かびます……。それに加えて、この春からは家庭教師も始めたんですね。
高校の教員になることを視野に入れているので、学生のうちに高校生の集団授業を受け持っておきたいと考えていたんです。ですが、今働いている塾では受け持てるのが小中学生だけなので、一対一の家庭教師のアルバイトも始めることにしました。
まずは家庭教師で経験を積んで、いずれは高校生の集団の授業を受け持てる塾に移りたいと考えています。やっぱり集団の授業と個別の授業では、1人の生徒に対して指導できる範囲や時間が違ってきます。レベルの違う生徒がいる中で授業を組み立てていくスキルを磨いていきたいです。
将来、どのような教員になりたいですか?
正直迷っています。というのも、高校の国語教師にも日本語講師にも興味があるからです。「国語教師」は日本人に対して国語を教える先生のことで、「日本語講師」は日本で日本語を母国語としない子どもに日本語を教える先生、あるいは海外の子どもたちに日本語を教える先生のことを指します。
国語って「答えがない教科」って言われるじゃないですか。なので、もし国語教師になるなら、生徒の回答を一概に正解・不正解で済ますのではなく、一人一人が出した答えに対して「なんでこういう風に思ったのか?」という過程を聞いた後、「こういう考え方もあるんだよ」と提案できる先生になりたいです。
また、日本語講師になるなら「自分のルーツを大事に思っていい」ということを生徒に伝えたいですね。それぞれ別の目標があるので、どちらの道に進むかあと2年かけて考えます!
進路が決まったらまたぜひお話聞かせてください。最後に、これからの大学生活でやってみたいことはありますか?
海外旅行をたくさんしたいです!あとはビールの売り子のアルバイトにも興味があります。
それから、これからスタディ・アフター・スクール(SAS)という、大阪教育大学と柏原市が連携しておこなっている放課後学習支援事業の一環で、柏原市の小学校に派遣されて放課後授業をするんです。それが今からめちゃくちゃ楽しみです!