美学生インタビューInterview
熊本で芽生えたアナウンサーへの思い スクールでは人間としても成長できました
まずは、アナウンサーを目指したきっかけを教えてください。
中学1年生の時に地元で起きた熊本地震がきっかけです。震度7を記録した益城町の近くに住んでいたので、私の家もすごく揺れました。環境が一変し、いつも優しかった祖父母や両親の顔がこわばっていたのを覚えています。
そんな時、朝のテレビ番組を見たら、アナウンサーの方が「おはようございます」といつも通りの笑顔で挨拶をして、しっかりとした声で情報を届けてくれたんです。余震も多くて私自身とても不安だったのですが、そのアナウンサーの姿を見て、「なんとかなるかもしれない」と思えたんですよね。画面を通して人々を守れる仕事ってカッコいいなと思い、それからアナウンサーを目指し始めました。
そんなきっかけがあったんですね。大学進学後、夢のためにどのような活動に取り組んできましたか?
1年生から日本テレビのイベントコンパニオン、通称「日テレイベコン」と呼ばれるお仕事を始めました。『行列のできる相談所』や『しゃべくり007』などの番組内でアシスタントとして看板を持ったり、食事を運んだりする役割を務めます。テレビの現場がどんな感じなのか興味があって応募しました。
実際に現場に入ってみて、どうでしたか?
もちろん華やかな面もありましたが、何より上下関係がとても厳しかったです。例えば、食事の時は先輩より遅く食べ始めて、早く食べ終わるとか、先輩が通るドアはすぐに開けるとか、細かいルールがたくさんありました。私は一人っ子で甘やかされて育ってきたので、そこで初めて社会の厳しさを知りましたね。イベコンでの経験が間違いなく今の自分を形作っています。
アナウンススクールにはいつから通い始めたんですか?
2年生からです。いろんなことを学びましたが、特にフリートークは難しくて苦労しました。
私はだらだらと喋ってしまう癖があるんです。聞いている人は結論を早く知りたいのに、つい自分本位な話し方をしてしまうんですよね。スクールの先生からは、「相手が何を求めているのかを考えて話しなさい。」と指導されて、そのことを意識するようになったおかげで話し方はだいぶ変わりました。
熊本出身ということで、標準語のアクセントを身につけるのも苦労したのでは?
はい。アクセントはレッスンの度に指摘されていました。あと、方言もですね。
例えば、「○○を片付ける」を「○○をなおす」、「○○がやってる(開催されているという意味)」を「○○があってる」って言ってしまうんです。地元では当たり前のように使っていたので指摘されるまで方言だと気づかず、「これも間違ってたの?!」と驚くことが多かったです。
でも、アナウンサー試験では「熊本出身なのにアクセントが全然気になりませんね。」と言われるくらいになりました。
スクールのおかげで成長したんですね!
スクールではアナウンスのスキルはもちろんですが、人としても大きく成長させてもらったと感じています。
いつも「相手の心をどうやったら開けるのかを考えなさい」と言われているんです。これはアナウンサーとして大切なスキルの一つで、相手が今、何に関心を持っているのかに気付けるところから相手との信頼関係が生まれるからだそうです。
そのためにスクールでは日々挨拶が徹底されていて、お礼、謝罪、報告をちゃんとすることがルールになっています。特にお礼は、相手の“何”に対しての感謝なのかをきちんと言語化することを心がけています。この習慣のおかげで、相手は何が嬉しいのか、何が不安なのかを想像する力が身につき、普段仕事で関わる大人の方とも円滑にコミュニケーションが取れるようになりました。
また、スクールの先生から頂いた「挫折したときは北極星を見なさい」という言葉も印象に残っています。
「北極星を見なさい」ってどういう意味ですか?
北極星って、夜空を見上げるといつも同じ位置にあるじゃないですか。夢に向かって突き進む中でつまづくことがあったとしても、上を見たら必ず自分の目標がそこにあるから、見失わずに頑張りなさい、という意味です。
アナウンサーを目指す中で心が折れそうになることもありましたが、この言葉に何度も救われました。今では私の一番好きな言葉です。
緊張より楽しさが勝った学生アナウンス大賞
2024年3月には「第4回学生アナウンス大賞」でグランプリを受賞しましたね。このコンテストにはどのような気持ちで臨みましたか?
アナウンサーの登竜門とされているコンテストなので、自分が今どのくらいのレベルにいるのか知りたいと思って挑戦しました。当時は自分が本当にアナウンサーに向いているのかわからなかったので、就活を始める前に力試しをしてみたかったんです。
実際に挑戦してみてどうでしたか?
初めて大きなカメラの前で話をしたんですけど、ものすごく楽しくて……!これまで自分が話し上手だと思ったことはなかったんですが、カメラの前に立つと自然と「画面の向こうにいる人を楽しませたい」という気持ちが強くなって、緊張より楽しさの方が勝っていました。
楽しいって大事なことですよね。最終審査はどうでしたか?
最終審査では「世の中に伝えたいことを1分間でスピーチしてください」という課題があり、そのテーマは本番の2日前に知らされました。こんなに大きな舞台でたくさんのカメラや観客の前で自分の思いを話す機会はなかなかないと思い、前日の夜は寝ずに伝えたいことを考えてスピーチに臨みました。
どんなスピーチをしたんですか?
私がアナウンサーになったら、いろんな人の“声”を聞きたいという話をしました。
私は昔から友人や初対面の人から相談をされることが多くて、そこで「どんなに明るい人や輝いて見える人にも、心の内に抱えているものや、人には言えない悩み、世の中に対する不満がある」ということを実感したんです。話を聞いてもらえないままだと、SNSで暴走して誰かを傷付けてしまう人もいると思うんですよね。
だから、私がみんなの話に耳を傾けたい、本音を言うことを諦めないでほしい、ということを気持ちを込めてお話しました。
グランプリに選ばれた時の気持ちを教えてください。
「自分の思いがちゃんと伝わったんだ」という安心感でいっぱいでした。独りよがりな話なんじゃないかと不安だったので、そうではないとわかってホッとしました。
学生アナウンス大賞に挑戦するまでは、自分がアナウンサーに向いているか確信が持てず、一般企業への就職も視野に入れていたんですけど、グランプリを頂いたことで自信が持てるようになりました。何より、選考中やファイナルステージでスピーチしている時が本当に楽しくて、改めて「これを仕事にしたい」と強く思いました。
最近はどのような活動に取り組んでいますか?
自分の強みを作りたいなとさまざまなことに挑戦しています。例えば、リポート力を身につけたいと思い、桜の季節には一人で公園に行って、スマホで自撮りをしながらリポートの練習をしていました。周りには花見客がたくさんいたので、きっと変な人に見られたと思います(笑)
それから、自分の好きな美容の知識をもっと深めたいと思って、最近、スキンケアアイテムを取り扱っているお店でアルバイトを始めました。将来の仕事にも活かせるように、今後は気象予報士の資格の勉強にも取り組みたいと思っています。